風俗は風俗ならず

「風俗」というワードで検索をかけると、いわゆる “性風俗” の情報ばかり結果として表示される。ブラウザでセーフサーチの設定をOFFにしているからなのだが、なぜ本来の「風俗」の意味を無視した結果ばかり上がってくるのか・・。

検索結果 クリックしてもモザイクは取れないw

お陰・・というか何というか「風俗」=Hなものという認識の若い人も多いのではなかろうか。 ・・あ、言っておくが、私が日頃から その手のサイトばかり見てるから結果として表示され・・という話じゃないのでお間違えの無いよう・・。ウン、こういったことはちゃんと分かっといてもらわないとね・・w。

 

「風俗」とは “ある時代や社会、ある地域や階層に特徴的にみられる、衣食住など日常生活のしきたりや習わし、風習のこと。(Goo辞書)” のことである。 要するに人の暮らし・生き方・習慣・感覚そのものである。 人の暮らし故にその中に性行為も含まれはするが、それはあくまでごく一部である。

それが何故、その手の業務やサービスを代表するような言葉となってしまったのか・・?

つまるところ「風俗」の中の「性風俗」の部分だけがピックアップされ、サービスや話題に用いられるようになったものの、わざわざ “性” を付けて呼称するのは何となく憚られるため、略して言われるのが「風俗 / フーゾク」であり、イコール “ムフフ” な印象として定着してしまったのである。

私などイナバナ.コムの方で、民族系の記事を書くこともあるので “その時代の風俗として・・” などと著したりするが・・何処となくビミョーな表現に取られないかな? とか、妙な心配をしたりもするのである・・。

 

この「風俗」と同じように誤用され、あまつさえ国際問題にまでなった言葉に「トルコ風呂」がある。昭和40年代くらいまでの生まれの方なら、その呼称も後に「ソープランド」と名を変えた時流もご存知だろう。

「トルコ風呂」の本来は、そもそもその名のとおり “トルコの風呂・公衆浴場” である。 ”ハンマーム” と呼ばれ、どちらかというとサウナ(蒸し風呂)であり 浴槽にゆったり浸かるというものではない。ここら辺は日本でも初期の(江戸時代)銭湯の形態も同様であり、湯を潤沢に供給出来ない時代の工夫でもある。(自然温泉はまた別)

テレビなどで稀に紹介されるが “垢すり師” が待機しており、客の要望に応じて垢すりやマッサージサービスを供する。Hな要素は微塵もない・・どころか、入浴客は男女別、腰巻きの着用、男性客には男性の垢すり師、女性客には女性の垢すり師など、結構厳密に規定されている。

 

それじゃ単なる “サウナ風呂” じゃん! となるはずだったのだが・・、古き時代にあって、ひとつ目につくことがあった・・。中東の風俗(本来の意味の方)である。

リアルトルコ風呂 色っぽさの欠片もないw

中東において女性は、いたずらに(家族以外に)素顔を晒さないという宗教的不文律があり、屋外ではヒジャブ(ベール)で顔を隠して行動することが多い。風呂(公衆浴場)に行くときも同じく・・。

しかし、浴場内に入ればさすがにヒジャブを取り、素顔・裸での女性同士の付き合いとなる。 古くから “ハンマーム” は女性にとって “貴重な、隠さない社交場” であったようだ。

ところが、この様子を見た外国人からしてみれば、普段、いかなる時も素顔を伺い知れない女性たちが、そのベールを剥ぎ取って集うという構図に、妙な耽美的なものを感じたのだろう。語弊を覚悟で言うなら “ギャップ萌え” の一種かもしれない・・。

画像はWikipediaより。でも、こんな若い女性ばかりのはずはない。

そこへ イスラム世界における “ハーレム / ハリム” の存在も重なり(ハンマームとハーレムは何の関係もないのだが)、さらに当時の西洋人のオリエント幻想と混じり合うことで、いやが上にも扇情的なイメージで西洋に伝えられ定着してしまった。 いうなれば、ここ百年二百年の昔から誤解は始まっていたのである・・。

 

日本に “トルコ風呂” が入って来たのは戦後しばらくの後、先述のエキゾチックなイメージは持ちつつも、最初はサウナと 女性によるマッサージサービスであり、入浴業務の範疇であったようだ。

しかし、ルールなんてものはいつの時代も掻い潜る者は出るし、マッサージサービスに個室が設えられるようになると、後はもう そっち方面へ一直線。昭和33年に廃止された “赤線” に代わる性産業として隆盛の道を辿った。

 

昭和56年(1981年)から昭和58年(1983年)にかけ、トルコ人留学生による抗議が発端となり、”ロマン風呂” だの “ラブユ” だの幾つかの代替名候補が挙げられた後、”ソープランド” になったのは周知のとおりである・・。

 

これ以外にも、子供の頃、Hな映画・文化といえば “スウェーデン” だか “デンマーク” だか 北欧の国! という、何やら都市伝説風の噂を聞いたような気がする。・・今回調べてみたがよく分からなかった・・。

この世は誤解で満ちている・・。などと書けば暗澹な気分にしかなりようがない。 しかし誤解が横溢しているのは事実なのだろう。 そこに利害や金銭が絡んでくるとなおさら事は混迷の様相を呈してくる。

されど、まぁそれが人の世というものなのだろう。
だって、人は他人の事どころか自分自身の事でさえ・・、ちゃんと把握出来ている人は稀なのだから・・。

 

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