悪人、狼藉を働き、悪行を重ねる者のこと。
狼藉を働き、悪行を重ねる者のこと。「悪者」、「悪漢」、「悪党」ともいい・・
前回のVivaHeels!と同じ出だしだろうが! ・・まぁ、悪役をネタにしたカテゴリーなのでお許しの程を・・。 要するに善良(とされる)人々や社会に対して害を及ぼす者のことである。
一般的な感覚からして “悪者” とは、イコール “憎まれ者” であることが多い。社会にとって歓迎し難いもの、排除すべき対象と認識されるからだ。
そして、演劇などに登場する “悪役” はといえば・・、やはり “憎まれ者” であるものの、ドキュメンタリーを除けば基本的に架空のお話でもあるし、あくまで “役どころ” なのだから そこまで嫌われることは少ない。
それでも “役” を越えて見る者に嫌悪感を抱かせ、腹立たしさや打倒・排除の感覚を呼び覚ますなら、それは並外れた役者の器量故ということになろう・・。 往年の名優 “吉田義夫” など 私生活においてタクシーに乗車拒否され、石まで投げられたというから相当なものである。(悲しき職業弊害・・w)

本日のVivaHeels!は「ジョナサン・ハリス / Jonathan Harris」アメリカの俳優さんである。
ジョナサン・ハリス といってもピンと来られない方も多かろう。そこまで著名・・とも言い難いからだ。多種多様の映画・テレビドラマ作品に出演され、アメリカではそれなりの知名度を持っていたが、およそ日本において彼の姿を見るのは一本の連続テレビドラマのみである・・。
そのドラマの題名は「宇宙家族ロビンソン」
昭和41年(1966年)から約2年に渡りテレビ放送された、輸入SFドラマである。「ミステリー・ゾーン」「原子力潜水艦シービュー号」「タイムトンネル」などと同じく、当時の夜間人気番組であった。
版権の都合からか、あまり再放送もされ難い輸入ドラマゆえ、後のメディア視聴を除いて これらの番組を知ってる・見ていた人は現在60歳以上が大半であろう。「宇宙家族ロビンソン」? の方には申し訳ない記事である・・。
一応、概略だけ書いておくと・・、地球の環境悪化による宇宙移民計画が立てられ、先行して宇宙探査に旅立った宇宙船と搭乗する博士家族+3人の物語である。SF冒険譚といったところ・・。 ドラマ設定年が1997年、「2001年宇宙の旅」「謎の円盤UFO」などと同様、当時の未来展望における甘さ拙さが伝わってくる・・。
“+3人” の一人は宇宙船運航士である “ウエスト少佐”、もう一人は業務・生活補助用のロボット “フライデー”、そしてもう一人が・・、見ておられた方ならば すぐに思い出せよう。 “ドクター・スミス / Dr.ザックレー・スミス” である。
ロビンソン博士 家族の一員ではない。アルファ計画(宇宙移民計画)の関係者ではあったが、搭乗員リストにも入っていない一スタッフでしかなかった。 それどころか、アルファ計画を頓挫させるべく動いていた工作員であった。
これが何故 +3人に含まれているかというと、まさに旅立たんとしていた宇宙船に密かに潜り込み、出発後の破壊工作を目論んでいたからである。 当然 工作後に自分は速やかに脱出せねばならないのだが、セットに手間取り自分を乗せたまま宇宙船は発進してしまった。
結果、+3人の内の1人となるとともに、余計な搭乗員の1人ともなってしまい、これが原因で船は予定軌道を外れ漂流の旅へ・・という展開。
・・で、このドクター・スミスを演じたのが “ジョナサン・ハリス”、アメリカ・ニューヨーク、ブロンクスの貧民層出身ながら、幼い時に見た演劇に魅せられ、以後、貧苦を舐めながらも進学。20代半ばにして初舞台を踏み、経験を重ね ついに28歳にして主役を任されるまでになる。一説にはマーロン・ブランドとも共演したこともあるそうな・・。
役作りに真摯な役者として活躍の場を広げ、その軸足をテレビ映画・ドラマに移すようになる頃には、既に特徴あるキャラクター俳優としての地歩を築いていたという。「宇宙家族ロビンソン / 原題Lost in Space」へのキャスティングを勝ち取り、これが彼を代表する作品となった。
当初、SF冒険譚として描かれていた「宇宙家族ロビンソン」だったが、しばらくするうちに路線を修正、SF(サイエンス・フィクション)というよりは “宇宙を舞台にしたオズの魔法使い”、ミスティックというよりはコミカルな色彩を強めてゆく・・。
何故か? 理由は色々あろうが、この “ドクター・スミス” のキャラクターが強い! 正直なところ主役であるはずのロビンソン一家が、子供(ペニーとウィル)を除いて霞んでしまうほど・・。
何せ、宇宙船破壊を目論みながら結果的に “お荷物” となった身のくせに、その後ろめたさなど何処へやら。
時に狡猾、時に卑屈、時にへりくだりながら、また時に良からぬ陰謀を巡らせる・・という、人殺しも大規模破壊もしないままに “よくもこんなヤな奴いたね・・” と思わせるほどのキャラクターである。悪役であるとともに、まさに “憎まれ者” の鑑である・・w。
しかし・・、ここまでヤな奴のために何故ドラマの路線変更を為したのか? 魅力的だからである。
絶対権力を持つ悪の首領でもない。それに至るほどの凄惨な過去を背負った悲しき悪人でもない。 ”ジョナサン・ハリス” が演じる “ドクター・スミス” は、ごくありふれた “性根の悪い人” であり、言い換えるなら “人間の暗部”、”誰もがその奥底に持つ身勝手さ” を演じ切ったキャラクターであったからに他ならない。
彼の行動や心の動きを見て “虫酸が走る” のを感じながらも、視聴者は無意識のうちに己を含めた “人間の弱さ・愚かさ” そして “寂しさ” を思っていたのではなかろうか。
時折り(本当にごく稀だが)ドクター・スミスが見せるペニーやウィルに見せる愛着・優しさが、それを際立たせているようにも見える。 如何な悪党だろうが憎まれ者だろうが、はたまた正義の味方だろうが、この世に一人では生きていけないのである・・。
そして、それを雄弁に演じ切り、物語の方向性にまで影響を与えてしまう “ジョナサン・ハリス” の器量こそ、まこと役者としての底力であったのだろう。
「宇宙家族ロビンソン」のスミス役が、大きな足跡となり過ぎたためか、後年の仕事には今ひとつ恵まれなかった “ジョナサン・ハリス” だが、それでも終生 与えられたキャストを旺盛に演じていった。
名が売れれば浮かれ勝ちな世界にあって、まだ駆け出しの頃一緒になった奥さん(幼年時代からの付き合いらしい)と64年添い遂げて、2002年、テレビリブート作「ロスト・イン・スペース」へのゲスト出演を前に、87歳の人生に幕を下ろした。
“憎まれ役” を演じて著名となった彼だが、その人生はきっと人間味に満ちた有意義なものであったに違いない・・。