聴くべきか聴かざるべきか

聴くべきか聴かざるべきか・・。それが問題だ・・。 後年発売されながら全く知らなかった その曲を・・。

ある意味『モップス』は不思議な存在のバンドであったのかもしれない。 サイケデリック・ロック・バンドとしてデビュー、活動しながら、どこか地に足の付いたような音楽性を覗かせていたように思える。

時は60年代(1960年代)の後半期なのでグループサウンズブームもやや退潮期、ヒッピー文化の影響を受けた(表面的にだが)自由?な風俗の拡大で、それまでの社会理念がさらに揺らぎはじめた頃だった。良くも悪くも新たな指向性の角度が大きく開かれた時代だったのだろう。

サイケデリック・ロックというなら、そのような風体でそのような演出で、そして、それまでにない楽曲を世に送り出していったが、実際にサイケデリックという看板が、彼らの本質であったのかというと微妙なところがある。 彼らがロックに求めていたのは もっと広範な可能性にあったように思うのだ。

本格的な “日本語ロック” に取り組んだ嚆矢だと言う者もいる。

 

74年になると火を消すように解散。メンバーはそれぞれの道を歩み出していったが、世の耳目に触れたのは “鈴木ヒロミツ” そして “星勝(ほし かつ)” だろうか・・。

“ヒロミツ” はタレント・俳優としての歩みを始めた。丸メガネをトレードマーク(実際には色々な眼鏡を使用)に、特徴的な風采、親しみやすい性分、そして何にでも一生懸命な姿勢が受けたのか、テレビドラマの常連となり、多くの映画にも出演を果たした。

“モーレツ!” が信条だった経済成長期への送別かのような71年「Mobile石油」のCM。まだ「モップス」活動期の出演だったが、彼の俳優としての素地は、この頃既に出来上がりつつあったのだろう。

その恰幅の良さからというわけでもないが、何故か刑事など警察関係の役柄が多かったようにみえる。 それも悠々灼々のポストや知的なエリートといった役回りではなく、職掌や人間関係に苦労する中間管理職・・のような、人間臭い役どころが身に嵌っていた。

役者の演技と本人の素の性格が同じものである訳でもないが、彼のこういった “人の間で生きる” ような役どころの多さは、”鈴木ヒロミツ” の人となりの上に成り立っているように思えてならない・・。

それだけに、彼の早すぎる逝去は惜しんで余りある。彼の持ち歌だった「でも、何かが違う」を思い出しながら、無情を感じたことを今でも憶えている・・。

 

対して “星勝” 。あまり矢面には立たない。モップス時代から培っていた作曲・編曲の技能に磨きをかけ、音楽業界の水面下を静かに泳ぐ自由なイルカの如き表現者となった。

専門的な分野ゆえ詳しくはWikiなど参照されたいが、元々ロック志向だった素性から、当初は如何な素材の楽曲でもロックなアレンジに流れるきらいがあったようだ。しかし、仕事をこなすごとに 新たな知見と世界観を吸収していき多様な表現を獲得。

果てはロックの対峙にそびえるかのような、穏やかで清涼な楽曲をも創出するに至った。

個人的な思い入れで恐縮だが、この世にある あらゆる楽曲の中で、最も好きな一曲「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」の「不安」を手掛けたのも彼なら、後の高畑勲・ジブリ映画「おもひでぽろぽろ」において、牧歌的ながらも心に染み入る劇伴で作品を彩ったのも彼である。

ロックの対峙 とは言ったが、彼が生み出す “人の想い” に根差した優しさ、夢幻とも思える音楽世界は、ロックを礎としてこそのものだったのかもしれない・・。

 

日本のオリジナル・ロック黎明時代に大きな布石を打った 『モップス』だったが、当時、一般的にその名が知られることは ある意味 “限定的” だったといえるだろう。

さらに、その終盤期にリリースした(吉田拓郎による)『たどりついたらいつも雨ふり』が、彼らのレパートリーで最も聞こえた一曲であることも事実だと思う。 『たどりついたらいつも雨ふり』は彼らの曲の中では分かりやすく 、そして彼ら自信を雄弁に歌い上げているようにも思う。

拓郎 版「たどり着いたらいつも雨降り」と人気を二分するところもあろうが、自分にとっての『たどりついたら・・』はやはり『モップス』なのである。

後年この歌の “後日談” 的 位置付け? リメイク作品として、『たどりついたら雨ふりだけじゃなかった』が、”鈴木ヒロミツ” の歌として静かにリリースされていたことを最近知った。

ぜひとも聴いてみたい! ・・と 思ったのだが、検索してみると どうも『モップス』の曲調からは、かなり外れたものとなっているようだ。(ソウル/ファンク路線 との評価がある)

また異なるスタイルでのアンサーソングも良いかもしれない。しかし、ずっと抱いてきた『モップス / 鈴木ヒロミツ』のイメージが瓦解するのも怖い・・。
聴くべきか聴かざるべきか・・。それが問題だ・・。

 

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