来世で会おう!

“テレビ・映画” のカテゴリーはあるが、純然たる “映画” のネタは久しぶりのような気がする。 『カサンドラ・クロス』『マックQ』『蘇える金狼』『白昼の死角』以来、およそ8ヶ月 記事にしていない。 ・・ので、本日は映画・・洋画のお話・・。

1988年の映画なので、昭和の終盤ギリギリの公開である。
ロバート・デ・ニーロ & チャールズ・グローディン 主演によるアクション映画。『ミッドナイト・ラン』 何故か もう一つ取り上げられる機会が少ないような気がするが “名作” だと思う。ロバート・デ・ニーロに関して、人によっては隠れた代表作とも評価する。

ご存じの方はご存知、好きな方は好きであろうから、細かくは書かないが・・、

正義を完遂したために職も家族をも失い、今は落ちぶれた賞金稼ぎ(逃走中の容疑者を確保して賞金を得るアメリカならではの職業)で日銭を稼ぐ元刑事。 ある日受けた “簡単な仕事(ミッドナイト・ラン=俗語)” 、あっさり容疑者を捕まえるものの 想定外の珍道中、思いもかけぬ大物ボスとその組織を相手のハードアクション。

奮戦をくぐり抜ける内に いつしか芽生える容疑者との男の友情、そして 絶ち難き家族との絆・・。

これだけのパーツが絶妙に絡み合いながら、終幕、ボスとの決着、容疑者とのけじめに至るまで、ハードでありながらも全編に渡ってコミカルなタッチが散りばめられた、妙味溢れる秀作である。

 

毎度のことだが、ロバート・デ・ニーロの “その役” になりきる力量には脱帽もの。賞金稼ぎ “ジャック” は デ・ニーロ本人の人物像と重なり合って、彼以外には演じられない錯覚・思い込みを引き起こさせるほどだ。

そして、彼とともに(組織から)逃亡の旅を続けながら、ジャックからも自由の身となるべく、あの手この手で逃亡を図る容疑者 “ジョナサン” を演じるのは “チャールズ・グローディン” 。 この作品以外で あまり名を知られていないのが残念だが、コメディーと渋みの両刀を巧妙に併せ持ち、使い分けられるベテラン俳優である。 彼が居なければこの映画の魅力は半減していたであろう・・。

他にも、事あるごとにジャックの行く手に絡み 手柄を横取りしようとする商売敵 “マーヴィン” 役に “ジョン・アシュトン” 、大物ボス “ジミー・セラノ” 役に “デニス・ファリナ” 、FBI捜査官 “アロンゾ” 役に “ヤフェット・コットー” ・・と、この映画、脇役のキャスティングに著名な俳優よりも、脇役としての力量を持つ人たちを配置したことが特色であると同時に、成功の鍵となったのではなかろうか・・。

 

成功・・とはいうものの、この映画が当時 興行的に大成功を収めたかというと・・、実際のところ “可もなく不可もなし + α” といったところ。 ジャックを立てて、続編も作ろうと思えば作れたような内容であったが映画化には至らず、数年後 この作品をベースとしたテレビ映画が3編作られたのみであった。

しかし、考えようによっては、それで良かったのかもしれない。興行収入数億ドルを稼ぎ出すような大ヒット作となったが故、”柳の下・・” の如く 次々と続編が作られ、その度に初期の充実と熱量を失っていった残念な例を、私達は嫌というほど知っている・・。

ジャックが、ジョナサンが、・・、そして ゲイル と デニース(ジャックの元妻と娘*)が、その後、どのような人生を歩んでいったのか・・。 描かれることもなく、見ている者の想像と希望に任せたまま、映画は時の流れに消えてゆく。・・それで良いのである。
* 娘デニースとの再会と別れのシーンは、この映画の一番のキツい所・・。泣けてくる・・思い出しながら書いてても泣けてくる・・。 私がジャックの立場なら情けなくポロポロ泣いてしまう。

 

・・映画のイントロダクションから流れるブルージーなエレキが魅力的である(↑ 4:20秒辺りから)。 清廉であるが故に世の不遇を囲ってきた、”世渡り下手男” の哀愁がデ・ニーロの演技と奏功して “ミッドナイト・ラン” の世界を見事に彩っている。 終盤、一言の会話もなくジョナサンを連行する場面にも、無言の中の哀愁と男の友情を雄弁に物語っている・・。

ジャックの個人的な “癖” を表現するために、終始用いられていた安物?の時計。物語の終幕にまで興味深いアイテムとして登場する。 動いているのか止まっているのか分からないようなボロい時計・・。しかし、これを通して刻まれる男たち、愛する家族たちの時間は永遠に止まることはないのだ。

 

・・と まぁ、こんな感じの映画でした。
あたりまえのことだが、感性は人それぞれなので、評価も様々であろう。

しかし、そこまでのヒット作ではなく、世を騒がせた話題作でないにもかかわらず・・、デ・ニーロは自分が出演した作品の中で、一番好きな作品として、この『ミッドナイト。ラン』を挙げている。

中年男の悲哀と格好良さを滋味豊かに描いた妙作、もし、未だ見ておられないのであれば・・、出来ればネットなどで あまり前調べをせずに一見をお薦めしたい・・。  “良い気分” になれること請け合いである。

「来世で会おう!」

後年のジャック(デニーロ)とジョナサン(チャールズ・グローディン は21年に他界)

 

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