Viva!Heels!02−還りしは闇か光か

「Viva!Heels!」第二弾 発動! 第一弾登場が私の中の Heels 金字塔 “甲賀幻妖斎 = 天津敏” であったが、その流れで考えるなら 次なるは “魔風 雷丸 = 汐路章” だ〜ッ! ・・と思っていたのだが、”赤影” ネタが続くのもよろしくない・・。

ならば、知らぬ者なきマッドサイエンティスト “死神博士 = 天本英世” をピックアップ! ・・かとも思ったが(ォィ、 あまりに有名所を矢継ぎ早に出してしまうと後々ネタ出しに苦労する。 ここは程々に進めてゆくが肝要・・(ホントにセコい性分やねw

・・と、いうことで 今記事、第二弾登場は “死神博士” をも凌駕する、ダークの創造者『プロフェッサー・ギル = 安藤三男』である。陰鬱さ・鬱陶しさでは死神博士も上回る。 登場番組である「キカイダー」は、他のヒーロー番組に比して微妙なウェットさが特徴だと感じていたが、それは主人公 “ジロー” の “良心回路” の不完全さとともに、このギルの暗さが影響を及ぼしていたのではないかとさえ思える。

 

“科学者” という割に、およそ科学者らしからぬ出で立ちである。 前合わせとなっていることから振り袖?の着物だと思うが、一見、どこかヨーロッパの修道士が着るルーズな黒衣のようにも見える。 ステッキ状の魔笛を常に常備していて 悪魔召喚でもしそうな感じ、科学の対極を象徴する装いだな あれは・・。

痩身・・というか病身を思わせるほど痩せこけた青白い顔、異様な眼光。アートな仕事を手掛ける者に時折見られる “ヘアスタイル全く無頓着” 伸ばし放題ボサボサの長髪。 どこにも言及されていないが、テレビ版ギルのデザインに関わった人は、あの、帝政ロシア皇室に暗然たる存在を遺した “グレゴリー・ラスプーチン” を意識していたのではなかろうか?

あくまでスピンオフでしかないが、プロデューサー平山亨による「本名:父ポマレンコ氏の一人息子アレクサンドル」というサイドストーリー設定も、それを物語っている・・。(参考:Wikipedia)

「ダークに生まれし者はダークに還れ」 吹き鳴らす魔笛はジローを苦しめるのみならず、自らが支配するロボットたちにも作用するようだ。 暗い洞窟の奥底を彷彿とさせる基地内・・からは、殆ど外に出たことないんじゃなかろうか? 引きこもり傾向かな?カウンセリングを受けた方が良いw。

 

悪役を演ずる俳優さんは、多かれ少なかれ葛藤の中で生きている。我が身一人ならばまだしも家族・子供などいれば尚更である。 それでもこれが 己の道と折り合いをつけて、その役どころに邁進する人は “悪役特有” の妙味に引き込まれてゆくことが多い。

事細かく設定が決められている主人公と異なり、凡その設定をこなしていれば、後は自分なりの解釈や演出を盛り込むことが許されやすいからだ。 昭和時代のテレビドラマなどでは特にその傾向が顕著だったように思う。 Heels 01 天津敏やその後を継いだ 汐路章なども、自ら考案した悪役メイクの化粧などに余念が無かったという。

プロフェッサー・ギル 演じる「安藤三男」も同様・・。 あの陰鬱・狂気を感じさせる演技は、氏ならではの力量によるところが大きいが、演技だけにとどまらず、メイクから立ち居振る舞い、カメラワーク、スロー撮影のアイデア出しにまでこだわって “テレビ版ギル” を結実させたというのだから、単なる一俳優の仕事を遥かに越えている。 「敵役はドラマのブリッジのようなものだから、存在感を大きく感じさせねばばならない」そう語る氏の目線は、監督の域に達していたのかもしれない・・。

「ジャイアントロボ」における宇宙人幹部 “ドクトル・オーヴァ”(ここでも一応 博士)
「イナズマンF」における “ガイゼル総統” (帝都物語の加藤保憲に似てるw)
そして、ついには「秘密戦隊ゴレンジャー」 において “超被り物”「黒十字総統」にまで至る(あの重たさ故に身体壊したんじゃなかろうね・・w?) いずれの時も “超一級の怖さ” を作り上げることに精魂を傾けた役者人生であったのだ。

 

最高傑作であったはずの “ハカイダー” との軋轢、そして喪失・・。創造した闇の使徒たちはことごとく討ち果たされ、追い詰められた最後の境地でプロフェッサー・ギルは、自らの聖域であった基地もろとも灰燼への道を選ぶ。 闇に生まれた、否、ダークに生きた男はダークの世界へ還って行ったのだ。

ギルを演じた安藤三男は、この後も数年に渡って闇に通づる役柄を演じ、世の数多の子らに黒き存在感を示し続けたが、昭和から平成に移り変わった頃 その生涯を閉じた。看取る者もない寂しき終幕であったとも伝わる・・。

“ドクトル・オーヴァ” も “ガイゼル総統” も、そして “プロデューサー・ギル” も闇へと消えた。 ならば、安藤三男もひとり孤独に暗き世界へと埋もれていったのか・・?

 

プロデューサー “平山亨” の著文に以下のようなものが残る。
昭和42年、「ジャイアントロボ」の制作打ち合わせに臨んだ時、”ドクトル・オーヴァ” 役に指名された安藤は、自ら考え、自ら進んであの “銀一色” のメイクを施し、平山の前に現れたのだそうだ。 その時の会話・・。

平山 「良いの?僕は嬉しいけれど、俳優さんは誰でも嫌がるのに」

安藤 「いいのです、私は役者として御客に面白いと思って貰えれば何より嬉しいのです」

平山 「でも御客は子供だよ」

安藤 「私も昔は子供でした。子供に喜んで貰えるのが最高です」

「泣き虫プロデューサーの「いいから俺にしゃべらせろ!!」」 より

安藤三男 が旅立って行った先は、子供たちの声と光にあふれる世界だったに違いない。
そう思うのだ・・。

文中 敬称略

オマケ : 「キカイダー ギル博士の歌」

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA