バックシャン 72

“バックシャン” と検索入力して、その後に (スペース)を入れると、検索候補のトップに “バックシャン 死語” と出てくる。 確かに今どきバックシャンなんて言葉、中年世代以降でもあまり使わない。 死語とされるのも むべなるかな・・。

・・とか思っていたら「最近よく聞くバックシャンって何?」などというファッション関連のサイトもあった。 一方でバックシャンの初出は1950年代との情報もある。リバイバル使用でもされているのだろうか・・?

世代や土地柄でご存知ない方も居られようし、一応 説明しておくと “後ろ姿美人” の隠語・言い回しである。 確かに後ろ姿に時に颯爽とした、時に妖艶な美しさを湛える女性は時折居られる。 均整のとれたスタイルや髪型、服装も要因ではあるが、そういう人に共通しているのは外的な装飾よりも、むしろ内的な立ち居振る舞い、芯の通った姿勢の正しさのように思える。

言い換えれば、モデルの如き八頭身でなくとも姿勢を正すことで、人はかなり見栄えよく見られることが可能なのだ。

・・但し、”バックシャン” の言葉の裏には得てして “後ろ姿は美人! 前に回ると・・” の揶揄が含まれていることしばしばなので ご注意のほどを・・。

 

バックシャンに似たような言い回し・・というか、女性の色っぽさを表す部位?に “うなじ” がある。後ろ側の首すじ、襟足の辺りに色気や魅力を感じる男性は少なくないようで、こちらは江戸時代の頃から取り沙汰されている。

・・が、私個人の感覚としては、この “うなじ” に魅力を感じたことは一度もない。私にしてみれば “うなじ” はあくまで身体の一箇所でしかない。

私にとって女性の魅力を覚えるのは、どちらかというと “仕草” の方であろうか。 後ろ髪を上げて髪を括る様であったり、屈んだり座ったりするときに、軽く裾を気にしたり足を斜めに揃えたり・・およそ男性には縁の薄そうな仕草を目にしたとき、女性らしい慎ましやかな美しさを感じてしまう。

適当な画像が無かったので・・ © 先輩がうざい後輩の話 / しろまんた

逆に言えば、そういった振る舞いから遠い・・、大股開きでドカっと座るとか ぞんざいな仕草の女性には、それの良し悪しは別にして、男性的な雰囲気を感じてしまい魅力が薄れてしまう・・。

まぁ、こんなこと書いてるとまた “身勝手な価値観” だとか “老害” だとか言われそうだが、別に誰かにそれを押し付けるつもりなどサラサラない。ご自由に振る舞っていただきたい・・。それをどう思うかもこちらの自由なので・・。

 

昭和時代に、街行く “ちょっと気になる?” 女性の後ろ姿をキーポイントに成功を収めたテレビCMがあった。

洗髪剤のCMだけに 多くはロングヘアーの女性。ご存知『エメロン・クリームリンス』の宣伝である。 街行く・・(芸人さんではなく)一般素人の女性に声をかけてCMを構成するという、当時としては斬新な手法で人気を博し、第二弾 第三弾と かなり長期に渡ってシリーズ化された。

同時に、バックに流れていたCMソング『ふりむかないで』(ハニーナイツ)も、流麗な旋律と叙情豊かな歌唱で人気となり、昭和世代の心に永く残る一曲となった。 振り向いてもらわないとCMにならないのに『ふりむかないで』と、ちょっと斜な題名も妙に入っている。

この歌は曲調の良さも際立つところながら、大きな特徴として各番ごとに、全国津々浦々の地名と特色が織り込まれていることが挙げられる。 古き「鉄道唱歌」のごとく各地方の風情と、その地の女性への淡い恋心が歌われまことに良い感じである。連番化にも大きく寄与している。

都道府県で連番するなら47番まで、ということになろうが、ここはもう少し詳細に分けられ、全部で72番まであるらしい。

 

“東京” を筆頭に2番 “札幌” 3番 “仙台” 4番 “名古屋” 5番 “大阪” 6番 “博多” と大都市が並ぶが、7番以降は “北海道編” 6曲、”東北編” 6曲、”北関東編” 6曲・・と地方ごとにまとめられながら続く。 最終2曲は “名護の人” “那覇の人” と沖縄2編で締め括られる。

全72曲、CMとこの曲がスタートしたのは昭和47年・1972年なので、奇しくも72という数字が合致する。まぁ偶々であろうが・・。

国内であっても、現在ほど情報も流通も十全でなかった頃、各地方の風情を湛えながら、ちょいとエレジーで仄かな色気を漂わせる歌心は今聴いても趣深い。 ・・が、残念ながら、その長さ故に(レコード)EP盤では6曲、LP盤でも12曲のみの収録であったらしい。

全曲、レコーディングだけはされた という情報もあるので、音源さえ残っていて、全曲収録CDなど発売されれば、それなりに売れるのではないかと思うのだが・・出てないところをみると・・失われたのかな・・。

とりあえず今日のところは歌詞のみで ご満足いただきたい。 当時の各地の素敵な後ろ姿でも思い浮かべながら・・。

『 ふりむかないで 』
歌:ハニー・ナイツ
作詞:池田友彦 作曲:小林亜星

    1. 泣いているのか 笑っているのか
      うしろ姿の すてきなあなた
      ついてゆきたい あなたのあとを
      ふりむかないで 東京の人
    2. ポプラ並木に ちらつく雪が
      あなたの足を いそがせるのか
      しばれる道が 気にかかるのか
      待って欲しいな 札幌の人
    3. たなばた祭りの 一番町で
      ふとゆきあって 目と目があった
      ゆかた姿の すてきなあなた
      ささやきたいな 仙台の人
    4. 雨の今池 小さなスナック
      一人ぼんやり しているあなた
      ほろり涙が まつげにたまる
      抱きしめたいな 名古屋の人
    5. 今にも空が 泣き出しそうな
      道頓堀の 橋のたもとで
      何を思案の こいさん一人
      声かけたいな 大阪の人
    6. 泣いているのか 笑っているのか
      那珂川ばたに たたずむあなた
      ついてゆきたい あなたのあとを
      ふりむかないで 博多の人
      .
      《北海道篇》
    7. 霧笛が長く 泣き終ったら
      あなたの頬が ひとすじ濡れた
      誰を思って 流した涙
      頬ずりしたいな 釧路の人
    8. 函館山に 灯のともるころ
      背黒かもめよ 教えておあげ
      帰る汐路も 知らぬげに
      さまよっていた 函館の人
    9. 鶴の来る日の 人恋しさに
      歌った唄は 十勝の風が
      空の彼方へ さらって行った
      思い出の人 帯広の人
    10. 小さな貝を 耳にかざして
      風の便りを 聴いてるあなた
      恋の心も 渚の風よ
      伝えて欲しいな 小樽の人
    11. 石狩川に 春風立てば
      平和通りに こころがはずむ
      花にかくれた うしろ姿に
      呼びかけたいな 旭川の人
    12. 霧が流れる 知床岬で
      風に吹かれて どこへ行くのか
      うしろ姿の 淋しいあなた
      ふりむかないで 網走の人
      .
      《東北篇》
    13. 風が哭いてる 連絡船で
      冷えた心に かくまき巻いて
      ひとりぽつんと しているあなた
      話してみたいな 青森の人
    14. 奥入瀬川の 早瀬の音に
      ゆうべ夢見た すてきなあなた
      智恵子の像に 似ているみたい
      どこにいるのか 十和田湖の人
    15. 蔵王おろしに 小雪が舞う日
      曇った窓に 書いては消して
      涙ぐんでる あなたは一人
      抱きしめたいな 山形の人
    16. 飯盛山の 三ヶ月さえも
      冷たい風に 吹きとがる
      障子にうつる あなたの影が
      すねているよな 会津の人
    17. 吹雪がやんで 北上川も
      ほっとしたよな 鷹匠小路
      雪道ふんで あなたのあとに
      ついてゆきたい 盛岡の人
    18. 夕暮れどきの 大町通り
      秋田おばこか こぶしの花か
      ついてゆきたい あなたのあとに
      ふりむかないで 秋田の人
      .
      《北関東篇》
    19. わらじ祭りに 夜もふける頃
      夜うぐいすが 一声鳴いた
      ふとゆきあった あなたの影に
      こころときめく 福島の人
    20. 梅の香りを たもとに入れて
      つんと澄ました 茶見世の中で
      おもわせぶりな あなたの肩に
      声かけたいな 伊香保の人
    21. 裏見の滝の しぶきに虹が
      かかれば あるのかしらと
      笑って云った あなたの頬に
      口づけしたいな 日光の人
    22. 出来ることなら 空とぶ雁に
      思いのたけを 書いた手紙を
      あなたのもとへ 持たせてやりたい
      忘れられない 水戸の人
    23. 木の間がくれに 光と影が
      たわむれていた 子犬をつれて
      やさしく叱った あなたの声に
      また会いたいな 大宮の人
    24. あなたが光る 金色の波
      夕陽が似合う 黄色いビキニ
      ついてゆきたい あなたのあとに
      ふりむかないで 木更津の人
      .
      《南関東篇》
    25. ちょっとおしゃまなミニスカートで
      あてもないよな うしろ姿に
      ついてゆきたい あなたのあとを
      ふりむかないで 新宿の人
    26. あすに望みが ないのと云って
      コハク色した グラスの酒を
      涙で割って 飲んでたあなた
      何故か気になる 赤坂の人
    27. 吾妻橋から 言問かけて
      そぞろ歩きの 駒下駄の音
      月もおぼろ 隅田堤で
      また会いたいな 浅草の人
    28. ビルの谷間に 星が流れて
      恋が生れて 来そうな気持
      ついてゆきたい あなたのあとに
      声かけたいな 渋谷の人
    29. しぐれ来る日の 外人墓地で
      港出てゆく 船の汽笛に
      忘れた恋を おもい出すよな
      耐えてるあなた 横浜の人
    30. 八幡様の いちょうの蔭で
      泣いているよな あなたの髪に
      かかる落葉は 金のかんざし
      ふりむかないで 鎌倉の人
      .
      《中部・北陸篇》
    31. 穂高しぐれか 大正池に
      霧が流れる あなたはいない
      声だけ遠く こだましてくる
      姿見たいな 松本の人
    32. 笛吹川から 甲斐駒かけて
      大きな虹が かかったときは
      恋が出来ると あなたは云った
      忘れられない 甲府の人
    33. さよならだけが 人生なのさと
      そんな強がり 云ってはみたが
      こらえきれない 三ヶ日のあたり
      また戻りたい 浜松の人
    34. 川面にはえる かがり火たいて
      うちわの蔭から こぼれた笑顔
      出来ることなら 舟こぎ寄せて
      話しかけたい 岐阜の人
    35. 朴葉味噌(ほおばみそ)焼く 香りが流れる
      かわたれどきの 二元町筋で
      格子戸あけて 目と目が合った
      可愛いあなたは 高山の人
    36. 玉の光に おもいをこめて
      つづった恋の ホワイトパール
      明日はお別れ いつまた会える
      真珠みたいな 志摩の人
    37. 雪に埋れた 雁木の角の
      赤いポストに 手紙を入れて
      はにかむような あなたの瞳
      一目で恋した 高田の人
    38. 雪が降る日の 古町通り
      赤いはなおの 雪下駄はいて
      どこへいそぐか 蛇の目の中が
      気になるあなた 新潟の人
    39. 風が吹いてる もう日が暮れる
      東尋坊の 海の深さを
      みつめていたよ こらえていたよ
      抱きしめたいな 福井の人
    40. あれは立山 いつか来たとき
      あれは大日 忘れられない
      えくぼの可愛い あなたはいない
      捜してみたいな 富山の人
    41. 誰を待つのか 香林坊で
      ふとほほえんだ あなたの瞳
      春風みたいに 心にふれる
      みつめてたいな 金沢の人
    42. 今日も見かけた 善光寺前
      昨日も何か 願かけていた
      おさげ髪した 心の中を
      きいてみたいな 長野の人
      .
      《関西篇》
    43. 雨が降ってた 三年坂で
      はなおが切れた 石だたみ道
      傘さしかけて 送ってくれた
      やさしいあなたは 京都の人
    44. 魔風恋風(まかぜこいかぜ) 千畳あたり
      紀州なまりを 背中にきけば
      ゆかた姿が ほんのり匂う
      夕顔みたいな 白浜の人
    45. ねずみ色した 小ぬか雨降る
      一人来た日の メリケン波止場
      なぜかたがいに 心寒くて
      恋のまねした 神戸の人
    46. 鐘が鳴る鳴る 夕陽が沈む
      秋の愁いを 野菊に寄せて
      丘にのぼれば たたずむあなた
      話しかけたい いかるがの人
    47. あの夜の恋を さがし求めて
      尋ねて歩く 大阪しぐれ
      つきあたるのは 木枯ばかり
      忘れられない 北浜の人
    48. 小舟が帰る あなたは一人
      渚の砂に 字を書いている
      みつめていたい あなたのことを
      ふりむかないで びわ湖の人
      .
      《中国地方篇》
    49. 汐入川の 捨小舟にも
      春の愁いが 静かにゆれる
      一人思案の あなたの影に
      甘えてみたいな 倉敷の人
    50. はとが飛んでる 平和の塔に
      ちらりのぞいた 八重歯が光る
      レモンのような 可愛いあなた
      呼びかけたいな 広島の人
    51. いくら呼んでも とどかぬ声を
      ことさら風が さらってしまう
      あとに残るは 風紋ばかり
      はるかに遠い 鳥取の人
    52. あれは鯛網 鞆の浦よと
      教えてくれた 浄土寺の坂
      あなたのそばに 日の暮れるまで
      座っていたいな 尾道の人
    53. 雨にぬれてる 松江大橋
      泣いているよな 唐金擬宝珠(からかねぎぼし)
      傘もささず ぬれてるあなた
      声かけたいな 松江の人
    54. 月見やぐらに 夜桜散れば
      ほのかに香る 白いえりあし
      ついてゆきたい あなたのあとに
      ふりむかないで 岡山の人
      .
      《四国篇》
    55. 阿波の徳島 踊りの夜に
      初めて会った すてきなあなた
      眉山の月も 祝ってくれた
      今は思い出 徳島の人
    56. 唐人町で 夕立がきて
      出会いがしらに ぶつかった人
      思いがけない 相合い傘の
      名前も知らない 松山の人
    57. 戸島恋しい あの島蔭で
      手をとりあって もぐった海に
      ふたりの恋が サンゴになった
      忘れられない 宇和島の人
    58. 金毘羅様の 石段のぼれば
      何を祈るか うなじが白い
      聞いてあげたい あなたの悩み
      可憐なあなたは 丸亀の人
    59. 連絡船が 屋島をすぎて
      風に黒髪 なびかせていた
      ひとりぽっちの あなたはだあれ
      並んでみたいな 高松の人
    60. ふとゆきずりの はりまやばしで
      恋が生まれた 紅色サンゴ
      ついてゆきたい あなたのあとに
      ふりむかないで 高知の人
      .
      《北九州篇》
    61. 水の都で 道たずねたら
      川の柳が めじるしですと
      教えてくれた すてきなあなた
      恋してみたいな 柳川の人
    62. 船の汽笛が 聞えるたびに
      暗い窓見る あなたの瞳
      何を思って 誰を待つのか
      なぐさめたいな 天草の人
    63. 雲仙恋し あの人恋し
      もう逢うまいと 誓った別れ
      たそがれ時は つい思い出す
      会いたい見たい 島原の人
    64. あれは出島か 小曽根のあたり
      じゃがたらお春の せつないこころ
      ひと夜のちぎり かりそめの恋
      二度と会えない 長崎の人
    65. ふと知り合った 今宿あたり
      恋を語った お城のあとの
      木蔭が今は あなたのかたみ
      思い出ばかり 伊万里の人
    66. ほのかにゆれる 湯けむりの中
      見えてかくれた しぼりのゆかた
      ついてゆきたい あなたのあとに
      ふりむかないで 別府の人
      .
      《南九州・沖縄篇》
    67. あなたが歩く 長べいぞいに
      光がおどる あなたの肩に
      あんたがたどこさ うしろ姿に
      きいてみたいな 熊本の人
    68. 二人黙って 小さな店で
      みつめ合ってた 十五夜の頃
      はるかに遠い 潮騒いに
      も一度会いたい 大分の人
    69. ひと夜かぎりで 忘れましょうと
      指をからめて 約束をした
      どこか遠くで 花火が鳴った
      面影ばかり 宮崎の人
    70. 嵐来る日の 天文館で
      風に負けずに 歩いた二人
      ふとゆきずりの 恋だったけれど
      命が燃えた 鹿児島の人
    71. 誰にあげよか このデイゴの花
      あなたに会った 今帰仁城(なきじんぐすく)
      ほほえみ直した 大きな瞳
      胸に火のつく 名護の人
    72. 誰が唄うか 安里屋(まさどや)ユンタ
      灯ともし頃の つぼ屋町
      仏桑花(ぶっそうげ)に似た すてきなあなた
      恋してみたいな 那覇の人

 

 

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