“バックシャン” と検索入力して、その後に (スペース)を入れると、検索候補のトップに “バックシャン 死語” と出てくる。 確かに今どきバックシャンなんて言葉、中年世代以降でもあまり使わない。 死語とされるのも むべなるかな・・。
・・とか思っていたら「最近よく聞くバックシャンって何?」などというファッション関連のサイトもあった。 一方でバックシャンの初出は1950年代との情報もある。リバイバル使用でもされているのだろうか・・?
世代や土地柄でご存知ない方も居られようし、一応 説明しておくと “後ろ姿美人” の隠語・言い回しである。 確かに後ろ姿に時に颯爽とした、時に妖艶な美しさを湛える女性は時折居られる。 均整のとれたスタイルや髪型、服装も要因ではあるが、そういう人に共通しているのは外的な装飾よりも、むしろ内的な立ち居振る舞い、芯の通った姿勢の正しさのように思える。
言い換えれば、モデルの如き八頭身でなくとも姿勢を正すことで、人はかなり見栄えよく見られることが可能なのだ。
・・但し、”バックシャン” の言葉の裏には得てして “後ろ姿は美人! 前に回ると・・” の揶揄が含まれていることしばしばなので ご注意のほどを・・。
バックシャンに似たような言い回し・・というか、女性の色っぽさを表す部位?に “うなじ” がある。後ろ側の首すじ、襟足の辺りに色気や魅力を感じる男性は少なくないようで、こちらは江戸時代の頃から取り沙汰されている。
・・が、私個人の感覚としては、この “うなじ” に魅力を感じたことは一度もない。私にしてみれば “うなじ” はあくまで身体の一箇所でしかない。
私にとって女性の魅力を覚えるのは、どちらかというと “仕草” の方であろうか。 後ろ髪を上げて髪を括る様であったり、屈んだり座ったりするときに、軽く裾を気にしたり足を斜めに揃えたり・・およそ男性には縁の薄そうな仕草を目にしたとき、女性らしい慎ましやかな美しさを感じてしまう。

逆に言えば、そういった振る舞いから遠い・・、大股開きでドカっと座るとか ぞんざいな仕草の女性には、それの良し悪しは別にして、男性的な雰囲気を感じてしまい魅力が薄れてしまう・・。
まぁ、こんなこと書いてるとまた “身勝手な価値観” だとか “老害” だとか言われそうだが、別に誰かにそれを押し付けるつもりなどサラサラない。ご自由に振る舞っていただきたい・・。それをどう思うかもこちらの自由なので・・。
昭和時代に、街行く “ちょっと気になる?” 女性の後ろ姿をキーポイントに成功を収めたテレビCMがあった。
洗髪剤のCMだけに 多くはロングヘアーの女性。ご存知『エメロン・クリームリンス』の宣伝である。 街行く・・(芸人さんではなく)一般素人の女性に声をかけてCMを構成するという、当時としては斬新な手法で人気を博し、第二弾 第三弾と かなり長期に渡ってシリーズ化された。
同時に、バックに流れていたCMソング『ふりむかないで』(ハニーナイツ)も、流麗な旋律と叙情豊かな歌唱で人気となり、昭和世代の心に永く残る一曲となった。 振り向いてもらわないとCMにならないのに『ふりむかないで』と、ちょっと斜な題名も妙に入っている。
この歌は曲調の良さも際立つところながら、大きな特徴として各番ごとに、全国津々浦々の地名と特色が織り込まれていることが挙げられる。 古き「鉄道唱歌」のごとく各地方の風情と、その地の女性への淡い恋心が歌われまことに良い感じである。連番化にも大きく寄与している。
都道府県で連番するなら47番まで、ということになろうが、ここはもう少し詳細に分けられ、全部で72番まであるらしい。
“東京” を筆頭に2番 “札幌” 3番 “仙台” 4番 “名古屋” 5番 “大阪” 6番 “博多” と大都市が並ぶが、7番以降は “北海道編” 6曲、”東北編” 6曲、”北関東編” 6曲・・と地方ごとにまとめられながら続く。 最終2曲は “名護の人” “那覇の人” と沖縄2編で締め括られる。
全72曲、CMとこの曲がスタートしたのは昭和47年・1972年なので、奇しくも72という数字が合致する。まぁ偶々であろうが・・。
国内であっても、現在ほど情報も流通も十全でなかった頃、各地方の風情を湛えながら、ちょいとエレジーで仄かな色気を漂わせる歌心は今聴いても趣深い。 ・・が、残念ながら、その長さ故に(レコード)EP盤では6曲、LP盤でも12曲のみの収録であったらしい。
全曲、レコーディングだけはされた という情報もあるので、音源さえ残っていて、全曲収録CDなど発売されれば、それなりに売れるのではないかと思うのだが・・出てないところをみると・・失われたのかな・・。
とりあえず今日のところは歌詞のみで ご満足いただきたい。 当時の各地の素敵な後ろ姿でも思い浮かべながら・・。
『 ふりむかないで 』
歌:ハニー・ナイツ
作詞:池田友彦 作曲:小林亜星
-
- 泣いているのか 笑っているのか
うしろ姿の すてきなあなた
ついてゆきたい あなたのあとを
ふりむかないで 東京の人 - ポプラ並木に ちらつく雪が
あなたの足を いそがせるのか
しばれる道が 気にかかるのか
待って欲しいな 札幌の人 - たなばた祭りの 一番町で
ふとゆきあって 目と目があった
ゆかた姿の すてきなあなた
ささやきたいな 仙台の人 - 雨の今池 小さなスナック
一人ぼんやり しているあなた
ほろり涙が まつげにたまる
抱きしめたいな 名古屋の人 - 今にも空が 泣き出しそうな
道頓堀の 橋のたもとで
何を思案の こいさん一人
声かけたいな 大阪の人 - 泣いているのか 笑っているのか
那珂川ばたに たたずむあなた
ついてゆきたい あなたのあとを
ふりむかないで 博多の人
.
《北海道篇》 - 霧笛が長く 泣き終ったら
あなたの頬が ひとすじ濡れた
誰を思って 流した涙
頬ずりしたいな 釧路の人 - 函館山に 灯のともるころ
背黒かもめよ 教えておあげ
帰る汐路も 知らぬげに
さまよっていた 函館の人 - 鶴の来る日の 人恋しさに
歌った唄は 十勝の風が
空の彼方へ さらって行った
思い出の人 帯広の人 - 小さな貝を 耳にかざして
風の便りを 聴いてるあなた
恋の心も 渚の風よ
伝えて欲しいな 小樽の人 - 石狩川に 春風立てば
平和通りに こころがはずむ
花にかくれた うしろ姿に
呼びかけたいな 旭川の人 - 霧が流れる 知床岬で
風に吹かれて どこへ行くのか
うしろ姿の 淋しいあなた
ふりむかないで 網走の人
.
《東北篇》 - 風が哭いてる 連絡船で
冷えた心に かくまき巻いて
ひとりぽつんと しているあなた
話してみたいな 青森の人 - 奥入瀬川の 早瀬の音に
ゆうべ夢見た すてきなあなた
智恵子の像に 似ているみたい
どこにいるのか 十和田湖の人 - 蔵王おろしに 小雪が舞う日
曇った窓に 書いては消して
涙ぐんでる あなたは一人
抱きしめたいな 山形の人 - 飯盛山の 三ヶ月さえも
冷たい風に 吹きとがる
障子にうつる あなたの影が
すねているよな 会津の人 - 吹雪がやんで 北上川も
ほっとしたよな 鷹匠小路
雪道ふんで あなたのあとに
ついてゆきたい 盛岡の人 - 夕暮れどきの 大町通り
秋田おばこか こぶしの花か
ついてゆきたい あなたのあとに
ふりむかないで 秋田の人
.
《北関東篇》 - わらじ祭りに 夜もふける頃
夜うぐいすが 一声鳴いた
ふとゆきあった あなたの影に
こころときめく 福島の人 - 梅の香りを たもとに入れて
つんと澄ました 茶見世の中で
おもわせぶりな あなたの肩に
声かけたいな 伊香保の人 - 裏見の滝の しぶきに虹が
かかれば あるのかしらと
笑って云った あなたの頬に
口づけしたいな 日光の人 - 出来ることなら 空とぶ雁に
思いのたけを 書いた手紙を
あなたのもとへ 持たせてやりたい
忘れられない 水戸の人 - 木の間がくれに 光と影が
たわむれていた 子犬をつれて
やさしく叱った あなたの声に
また会いたいな 大宮の人 - あなたが光る 金色の波
夕陽が似合う 黄色いビキニ
ついてゆきたい あなたのあとに
ふりむかないで 木更津の人
.
《南関東篇》 - ちょっとおしゃまなミニスカートで
あてもないよな うしろ姿に
ついてゆきたい あなたのあとを
ふりむかないで 新宿の人 - あすに望みが ないのと云って
コハク色した グラスの酒を
涙で割って 飲んでたあなた
何故か気になる 赤坂の人 - 吾妻橋から 言問かけて
そぞろ歩きの 駒下駄の音
月もおぼろ 隅田堤で
また会いたいな 浅草の人 - ビルの谷間に 星が流れて
恋が生れて 来そうな気持
ついてゆきたい あなたのあとに
声かけたいな 渋谷の人 - しぐれ来る日の 外人墓地で
港出てゆく 船の汽笛に
忘れた恋を おもい出すよな
耐えてるあなた 横浜の人 - 八幡様の いちょうの蔭で
泣いているよな あなたの髪に
かかる落葉は 金のかんざし
ふりむかないで 鎌倉の人
.
《中部・北陸篇》 - 穂高しぐれか 大正池に
霧が流れる あなたはいない
声だけ遠く こだましてくる
姿見たいな 松本の人 - 笛吹川から 甲斐駒かけて
大きな虹が かかったときは
恋が出来ると あなたは云った
忘れられない 甲府の人 - さよならだけが 人生なのさと
そんな強がり 云ってはみたが
こらえきれない 三ヶ日のあたり
また戻りたい 浜松の人 - 川面にはえる かがり火たいて
うちわの蔭から こぼれた笑顔
出来ることなら 舟こぎ寄せて
話しかけたい 岐阜の人 - 朴葉味噌(ほおばみそ)焼く 香りが流れる
かわたれどきの 二元町筋で
格子戸あけて 目と目が合った
可愛いあなたは 高山の人 - 玉の光に おもいをこめて
つづった恋の ホワイトパール
明日はお別れ いつまた会える
真珠みたいな 志摩の人 - 雪に埋れた 雁木の角の
赤いポストに 手紙を入れて
はにかむような あなたの瞳
一目で恋した 高田の人 - 雪が降る日の 古町通り
赤いはなおの 雪下駄はいて
どこへいそぐか 蛇の目の中が
気になるあなた 新潟の人 - 風が吹いてる もう日が暮れる
東尋坊の 海の深さを
みつめていたよ こらえていたよ
抱きしめたいな 福井の人 - あれは立山 いつか来たとき
あれは大日 忘れられない
えくぼの可愛い あなたはいない
捜してみたいな 富山の人 - 誰を待つのか 香林坊で
ふとほほえんだ あなたの瞳
春風みたいに 心にふれる
みつめてたいな 金沢の人 - 今日も見かけた 善光寺前
昨日も何か 願かけていた
おさげ髪した 心の中を
きいてみたいな 長野の人
.
《関西篇》 - 雨が降ってた 三年坂で
はなおが切れた 石だたみ道
傘さしかけて 送ってくれた
やさしいあなたは 京都の人 - 魔風恋風(まかぜこいかぜ) 千畳あたり
紀州なまりを 背中にきけば
ゆかた姿が ほんのり匂う
夕顔みたいな 白浜の人 - ねずみ色した 小ぬか雨降る
一人来た日の メリケン波止場
なぜかたがいに 心寒くて
恋のまねした 神戸の人 - 鐘が鳴る鳴る 夕陽が沈む
秋の愁いを 野菊に寄せて
丘にのぼれば たたずむあなた
話しかけたい いかるがの人 - あの夜の恋を さがし求めて
尋ねて歩く 大阪しぐれ
つきあたるのは 木枯ばかり
忘れられない 北浜の人 - 小舟が帰る あなたは一人
渚の砂に 字を書いている
みつめていたい あなたのことを
ふりむかないで びわ湖の人
.
《中国地方篇》 - 汐入川の 捨小舟にも
春の愁いが 静かにゆれる
一人思案の あなたの影に
甘えてみたいな 倉敷の人 - はとが飛んでる 平和の塔に
ちらりのぞいた 八重歯が光る
レモンのような 可愛いあなた
呼びかけたいな 広島の人 - いくら呼んでも とどかぬ声を
ことさら風が さらってしまう
あとに残るは 風紋ばかり
はるかに遠い 鳥取の人 - あれは鯛網 鞆の浦よと
教えてくれた 浄土寺の坂
あなたのそばに 日の暮れるまで
座っていたいな 尾道の人 - 雨にぬれてる 松江大橋
泣いているよな 唐金擬宝珠(からかねぎぼし)
傘もささず ぬれてるあなた
声かけたいな 松江の人 - 月見やぐらに 夜桜散れば
ほのかに香る 白いえりあし
ついてゆきたい あなたのあとに
ふりむかないで 岡山の人
.
《四国篇》 - 阿波の徳島 踊りの夜に
初めて会った すてきなあなた
眉山の月も 祝ってくれた
今は思い出 徳島の人 - 唐人町で 夕立がきて
出会いがしらに ぶつかった人
思いがけない 相合い傘の
名前も知らない 松山の人 - 戸島恋しい あの島蔭で
手をとりあって もぐった海に
ふたりの恋が サンゴになった
忘れられない 宇和島の人 - 金毘羅様の 石段のぼれば
何を祈るか うなじが白い
聞いてあげたい あなたの悩み
可憐なあなたは 丸亀の人 - 連絡船が 屋島をすぎて
風に黒髪 なびかせていた
ひとりぽっちの あなたはだあれ
並んでみたいな 高松の人 - ふとゆきずりの はりまやばしで
恋が生まれた 紅色サンゴ
ついてゆきたい あなたのあとに
ふりむかないで 高知の人
.
《北九州篇》 - 水の都で 道たずねたら
川の柳が めじるしですと
教えてくれた すてきなあなた
恋してみたいな 柳川の人 - 船の汽笛が 聞えるたびに
暗い窓見る あなたの瞳
何を思って 誰を待つのか
なぐさめたいな 天草の人 - 雲仙恋し あの人恋し
もう逢うまいと 誓った別れ
たそがれ時は つい思い出す
会いたい見たい 島原の人 - あれは出島か 小曽根のあたり
じゃがたらお春の せつないこころ
ひと夜のちぎり かりそめの恋
二度と会えない 長崎の人 - ふと知り合った 今宿あたり
恋を語った お城のあとの
木蔭が今は あなたのかたみ
思い出ばかり 伊万里の人 - ほのかにゆれる 湯けむりの中
見えてかくれた しぼりのゆかた
ついてゆきたい あなたのあとに
ふりむかないで 別府の人
.
《南九州・沖縄篇》 - あなたが歩く 長べいぞいに
光がおどる あなたの肩に
あんたがたどこさ うしろ姿に
きいてみたいな 熊本の人 - 二人黙って 小さな店で
みつめ合ってた 十五夜の頃
はるかに遠い 潮騒いに
も一度会いたい 大分の人 - ひと夜かぎりで 忘れましょうと
指をからめて 約束をした
どこか遠くで 花火が鳴った
面影ばかり 宮崎の人 - 嵐来る日の 天文館で
風に負けずに 歩いた二人
ふとゆきずりの 恋だったけれど
命が燃えた 鹿児島の人 - 誰にあげよか このデイゴの花
あなたに会った 今帰仁城(なきじんぐすく)
ほほえみ直した 大きな瞳
胸に火のつく 名護の人 - 誰が唄うか 安里屋(まさどや)ユンタ
灯ともし頃の つぼ屋町
仏桑花(ぶっそうげ)に似た すてきなあなた
恋してみたいな 那覇の人
- 泣いているのか 笑っているのか