昭和テロップには “お知らせ” を含めて現在 11種のカテゴリーがある。
全て “昭和” の枠組みの中の話なので、分けなければならない理由もないのだが、記事数が増えたときの利便性を考え それぞれの記事に振り分けている。
出来るならば どのカテゴリーも平均して記事数を保持できれば良いのだが、中々そうもいかないカテゴリーもある。 その中のひとつが “怪訝” カテゴリー。
“怪訝” [事情や理由がわからず、不審に思うさま。]
分かったような分からないようなカテゴリー分けだが・・要するに、昭和時代の “事件” や “社会問題” を取り扱ったときに用いようと考えたマークタグである。現在 “怪訝” カテゴリーの記事数は僅か2本。「人パンジー」 と 「面倒は舞い降りた」だけである。 少数更新とはいえ約200件の総記事数からみると本当に少ない。
何故 “怪訝” カテゴリーの記事数が少ないかといえば理由は簡単、暗い記事になりやすいからである。
わざわざ時間を割いて昭和時代を懐かしむために訪問してくれるユーザーに、暗鬱な気分で帰ってもらうのも申し訳無い。・・だからあまり書かない・・そういう感じ・・。
それに、勝手な思い込みかもしれないが・・、現在に比べて昭和時代の “事件” は何がしかズンと重たいイメージがある。 あらゆる非常や非情が積み重ねられてマヒしてしまったのか、ここ20〜30年ほど少々の事件では騒がなくなってしまった。 命の重さは変わらぬはずなのだが、成人の一人が●されたくらいでは1、2回ニュースに載ってそれで終わりである・・。 昔なら 近所で●人事件など起こった日には、当分その家の前を歩くのでさえ憚られたものだが・・。
ともあれ 今回は1年半ぶりに “怪訝記事” を書こうと思う。●は嫌なので “経済事件” “詐欺” である。
戦後最大の投資詐欺事件、膨大な投資資金を搾取したとされる『投資ジャーナル事件』は昭和60年(1985年)11人の逮捕者を出して、その全貌を顕にした。
逮捕の7年前 設立した「投資ジャーナル社」は証券情報雑誌を発行し、”絶対に儲かる” の言葉よろしく数千人の出資者から総額580億円という資金を集めた。 しかし 年経たぬうちに事実上破綻。 その支払いは滞った挙げ句、主催者は国外逃亡し帰国とともに逮捕された。 広範に資金調達を募っていたものの肝心の証券は手渡さず、預り証のみ発行していたという。同時期に世間を騒がしていた「豊田商事事件」と同様の手口である。
詐欺事件というものは首謀者側に “騙す意図” があったかどうかが大きな争点となる。大抵の場合、被疑者は逮捕された後に「騙すつもりはなかった」と言い逃れようとする。
どう考えていた、どう思っていたか、頭を開いて見るわけにもいかないので、押収した資料や調査を元に状況証拠を積み重ね判断される。 「投資ジャーナル事件」でも “根拠の無い宣伝で客を騙し不当に資金を集めた” という理由で断罪されている。
結果的に “根拠のない大袈裟な宣伝・口上” が “騙した” と認定されたわけだが、仮に “絶対に儲かる” が “本人もそう思い込んでいた” と言われれば微妙な按配となる。要するに社会的・客観的にみて “騙したと言われても仕方ないだろう” ということ。”絶対に儲かる” など “絶対に” あり得ないのだから・・。
しかし “絶対にあり得ない” 宣伝に人は騙される。騙され続ける。
「信じていたから・・」といえば聞こえは良いが、安易に不合理な利益を夢見ていたこともまた事実であろう。 “5000億円の黄金郷” は砂上どころか陽炎の如き楼閣でしかなかったのだ。
被害者を揶揄するつもりはない。何故なら こんな大事件でなくとも世にある宣伝の多くは、大なり小なり無理や虚飾をはらみ、ユーザーはその演出の向こうに夢を見ているのである。 一緒にするな!と叱られそうだが “程度の問題” と言えなくもなかろう。
人気が出れば各種メディアがこぞって持ち上げるのも同様、投資ジャーナルの首謀者も当初は「兜町の風雲児」「証券界の寵児」ともてはやされていた。 事件が明るみに出ると一転「犯罪者」である。
この首謀者のようなタイプは総じて自らを演出することに長けている。そしてまた総じてアイデアマン・行動的・エネルギッシュであり(ある意味)並外れた努力家でもある。
この人も親が証券会社社員であったことから、幼い頃から投資に興味を持ち高校生時代には実際に投機を繰り返し、その後も投資研究に打ち込んで 20代の頃には会社を設立、大きな金を稼ぎ出していたというから、そのまま真っ当に進んでいれば大したものであったのだろう・・。
只、ひとつの問題は、そこに一線を越えた “嘘” が介在していることである。
自らを有る以上に見せるため 多くの嘘をはらんだ演出を施し、有名人や政治家 そしてメディアと関係をもち、それはますます大きな虚像を生み出していった。 異常なほど当たる!といわれ喧伝された株予想も、多くは “仕手” を駆使した意図的操作だったともいわれる。
“金は人を狂わせる” と言われるが “嘘も人を狂わせる” のだ。
永く “嘘” に浴した人生を送っていると、自らも虚実の見極めが出来なくなってしまう・・。
そうした人間の末路は・・ “どん詰まり” でしかない。
“嘘” とは “逃げ” でもある。 本来、人が歩むべき道筋から逃げて逃げて逃げ倒した挙げ句、待っているのは “薄暗いTHE END” でしかないのだ。
2020年2月、東京のとある安アパートから出火し、その焼跡から彼の遺体が確認された。
事件で服役・出所後、単身孤独に転々と居所を変え、貧しい暮らしを続けた果ての終幕だった。 世間や被害者から見れば、当然・相応、自業自得の最後とも言えようが・・。
彼を彼足らしめたのは、決して彼ひとりだけではなかったようにも思えるのだ・・。
ほら やっぱり暗い記事になった (TT
“怪訝” カテゴリー 3本目・・ 4本目は当分先、いつになるか分からない。
面白く楽しめる “怪訝” でもあれば話は別だが・・。