今どき男性であっても化粧する人は結構おられるらしいので、化粧=女性などと決めつけたような記事でも書いたら怒られてしまう・・。
歴史を紐解くと洋の東西を問わず、かなり古い時代から男性も化粧に関わっているようだが、しかし、現代的な化粧の目的・役割とはその意義を些か異にするようだ・・。(宜しければコチラもどうぞ「真白き妖力 白粉婆は神にもつながるのか – 奈良県」)
自分は・・若い頃からどちらかと言えば色白の方だった(単なる運動不足)が、化粧に関しては全く考えもしなかったし、そんな時代でもなかった。 男性+化粧で取り沙汰され、現在の流れの先鞭? ともいえたのが「安全地帯」の “玉置浩二” だったか・・? まぁそれ以前から “ジュリー(沢田研二)” もしていたような気もするが・・。
顔に何かを塗りたくるのは好きでないので、”シェーブローション” を除いて御免被りたいが、髪に関しては長い頃は整髪料を使っていた。(現在は短髪なのでトニックシャンプーで洗うのみ)
元々、髪が硬くて太く、真っ直ぐにしか伸びない性質なので形を付けようとすると苦労する。どうしてもモッコリプックリ・オボッチャマン方向へとなってしまう。無理に形作るためにパーマをかけると、いよいよもって盛り上がってしまう。 髪の薄さに悩む人からみれば “贅沢な悩み!” と言われそうだが、濃過ぎるのもそれはそれで苦労するのだ・・。
硬すぎる髪を制御するために色々な整髪料を使った。
「バイタリス」「各種ポマード」「ヘアクリーム」などである。何か情け無いのであまり言いたくないが、デートの前の晩には苦労して整髪した形を崩したくなく、オフクロに借りたヘアネット(ナイトキャップ?)をして寝たこともある・・。
主に整髪料、及び 髭剃り関連の化粧水(化粧じゃない気もするが・・) 多くををこれらで占められる “昭和の男性化粧品” は、結構 息の長いものが多い。 女性用化粧品に比べ、新商品を次々と開発しても販促に覚束ないので、定番で売れ続けるものだけが生き残った結果だろうか。
上述の「バイタリス」は 1940年代アメリカ発、日本では “ライオン歯磨” から1962年発売というから私と同い歳であるw。 ポマードよりベトつかないと発売当時 人気だったらしいが、それでも現代的な感覚からすれば、やっぱり・・シトッとしてたよね・・w。
男性化粧品・整髪料では「MG5」(資生堂)「MANDOM」(マンダム)などのヘアリキッド・ヘアトニックが一般的だった。(カネボウ)から出てたのが「VALCAN」だったか。「VINTAGE」(資生堂)もあるが、いわゆる「お高いんでしょ?」なラインである。
「MANDOM」ヘアトニックの方は何度か使った記憶がある。 「タクティクス」(資生堂)だったか、少々甘すぎる匂いだったので一度しか使わなかった・・。
家に一本トニックだかリキッドだか “片手を胸に入れたナポレオン” のマークの小瓶があり、それが凄く気に入っていた。(今見てもあのデザインはスバラシイ!)「EROICA」(カネボウ)である。上記の面々が現在も存続中であるのに「EROICA」だけが廃盤見込みとなっているのは何とも寂しい・・。
これらよりさらに遡るが 私が子供の頃、家には “チック” があった。白い紙製の筒に鶴のマーク「丹頂チック」(金鶴香水→丹頂株式会社→マンダム)である。親父が使っていた。かなりの保持力で髪を整えてくれるがポマードと同じくベタつき気味な仕上がり。 発売は昭和8年(1933年)だというから、このまま販売が続けば遠からず100周年を迎える超ロングセラー商品となる。
「丹頂チック」と双璧を成していた商品が「競馬チック」「競馬ポマード」だった。ゴールドな筒・容器に競馬マークで独特の存在感を示していたが、残念ながらこちらを店頭で見ることは既にない。 総体、”ワックス” や “ハードジェル” が製品化されて以降、これらの需要はかなり縮小したといえるだろう・・。
これら 製品の多くが共通するところに、多かれ少なかれ “匂いが強い” ことが挙げられる。 後年、無香料をウリにした「アウスレーゼ」も発売され愛好者を獲得したが、総じて “昭和 男性化粧品” を多用する昭和のオジサンは、”魅惑” の香りを発散させていたのである・・w。
人によると思うが、この匂いがキツ過ぎると感じる方も少なくない。
現在、髭剃り後のシェーブローションしか使わない私だが「BRAVAS・アフターシェーブローション」(資生堂)、これさえ、ウチのカミさんにすると匂いがキツいのだそうだ・・。
男性化粧品の多くは柑橘系の香料で調製されており、言うなれば “爽やか系” で良いと思うのだが・・無香料系が主流の現在から見れば異端の存在になるのだろうか・・。
世の中はどんどん “匂い” から離れてゆく傾向にある。野菜の香りも発酵食品の匂いも40~50年程前に比べれば随分と薄まってしまった。 現代の若い世代の人なら当時のピーマンや納豆など、とても食べれたものじゃないのではなかろうか・・。
全く関係ないかもしれないが、動物園の動物たちも世代を経るごとに 元来の体臭が薄まっているようだ。それでも利用者から匂いで苦情が来るというのだから、如何に現代の人間が匂いから遠ざかりつつあるかが分かるような気がする。
往古に比して(人)霊長類は嗅覚が著しく退化しているという。退化してゆく嗅覚に強い匂いは刺激的に過ぎるのかもしれないな・・。 されど、嫌な匂いとはいえ “身の危険を知らせる” 匂いまで遠ざける・知らない・・というのもどうかと思うが・・。
こういった傾向が良いことなのか悪いことなのか分かろうはずもない。おそらくは進化の過程での一面でしかないのだろう。 只、人が選んだ “進化” は “自然を離れる” ことと、ほぼ同義でもあるので・・、いずれは その結果を見る日が来るんじゃないだろうか・・?