50年を越えて届く歌

音楽は好きである。歌も好きだ。クラシックからロック、ボサノバから民謡、映画音楽から懐メロまで、割とジャンルにとらわれず聴くが当然 好みもある。

メロディーの美しいもの、しっかり作られたものは味わいやすいが、リズムやテンポ優先でメロディーラインの薄い曲や歌は、私には分かり難く苦手である。

「マーチ」はリズムを刻みながらメロディーもしっかりしているので普通に聴けるし、好んでマーチを蒐集されている方もおられるが、式典で用いるイメージが強いからか一般に聴く機会が少ない。高校野球の入場式くらいか・・。

そんな中、他の一般歌謡曲を押し退ける程の勢いで 一世を風靡したマーチがあった。昭和43年11月発売『三百六十五歩のマーチ』である。 躍動と自信に満ちていた時代を象徴するかのように、輝きを放った稀有な行進曲である。

 

演歌で その身を立ててきた水前寺清子が、全く異なるジャンルの曲にあたったことで知られるが、当初、ご本人の方ではかなり戸惑われたようである。着物を脱いでマーチングバンドの意匠を纏ったジャケット写真を撮るなど、気分的には相当に負担だったようだ。

しかし『三百六十五歩のマーチ』はヒットした。大ヒットと言っていいレベル、100万枚を売り上げるミリオンセラーとなった。 現在ほど騒音にうるさくなかった時代、スーパーから商店街、何がしかのイベントまでいたる所で流れていた。

ご本人的には どんな気分であったのだろう? とは思うが、(思うに)”たとえイヤであっても やるからにはしっかりやる”、彼女のプロ意識が功を奏したのではなかろうか? 以後、この歌は 水前寺清子の歌声と不可分の、昭和を代表する一曲となった・・。

・・のだが・・、当時 この歌を私はあまり好きではなかった。

理由はよく分からない。押しの強そうな歌詞・曲調が苦手だったのか、もしかしたらコレが関係していたのか、ともかく耳にすること自体がイヤであったように記憶している。 “三歩進んで ニ歩下がる” ってすごく割悪いやん! な感じであったろうか・・。まぁ要するに覇気に欠けた子供だったのだろう・・。

 

如何なヒット曲といえど いつかは勢いを失う。(それでもマーチ曲という性格からか、この歌は何かしらの機会に流れていたが) 背中から追い捲くられているかのように感じていた “ワン・ツー! ワン・ツー!” の掛け声を聞くことも少なくなった。

当の水前寺清子といえば この頃 “ドラマ初挑戦” 状態であった。こちらの方も当初ご本人 乗り気でなかったようである。あくまで歌手であることに誇りを持っていた彼女にとって、テレビドラマは全く異なる舞台であったようだ。

しかし こちらも石井ふく子(著名な番組プロデューサー)の説得に折れたかたちで出演。ホームドラマ『ありがとう』は大ヒット作となった。 こちらも “出るからには・・” の意気込みで頑張った故であろうが、どうも この人は、こういうパターンに恵まれているようだ。

私の方はといえば、この『ありがとう』が佳境に入った頃から、何というか・・流転ともいえそうな時を歩むことになる。 詳しくはしないが三十路を数えるまで、かなり振り回された人生だった。 自分の所帯を持ってからも 子を成し育て、家族を守り続けることのみ考えて歩いてきた。

おかげで 10年ほど前には子も巣立ち、ようやく落ち着いた毎日を送らせていただいている・・。

そして、この歳になると分かってくる。
あの歌は “本当だったんだな・・” と。

幸せは決して都合よく向こうから来てくれはしない。
自分の力で掴みとろうと努力を重ねるほかないのだ。

おまけに 大体の場合、思ったように事が運ぶことはない。
邪魔やトラブルにまみれながら、歯を食いしばって頑張るしか術がない。

そして 闇雲に追い続けていた幸せが、知らない間に自分の傍らにひっそり息づいていることに、ある日気付く・・。 かけがえのない人生の宝である。

50年を賭して “築いて” きた自分の知見が『三百六十五歩のマーチ』の中に全て織り込まれていた。 ”そういう歌なんだから当たり前だろ” と言われれば、そのとおりなのだが、私の場合 50年かけて それを再認識したことになる。 いやはや時間の掛かること・・。

思い描いたままの道を歩める者は稀である。
人生とは少なからず妥協の積み重ねでもある。

己の理想とは異なる道を歩かされようとしたとき、人は戸惑い抵抗を試みる。
しかし、それでもその道を歩まざるを得ないとき・・その人の真価が問われるのだろう。

来たる新年がどんな年になるのか誰も知ることはできない。
願わくば少しでも元気で、尚かつ穏やかな一年であることを願うばかりだ。

されど、思わぬこと、望まぬことが起こらないとも限らない。
それでも、それはそれなりに頑張って乗り越えてゆくしかない。
生きる力とはそういうことであり、それがあってこその人生の幸せなのだろう・・。

★ まぁ 正直なところ楽に過ごさせてほしいけどね! (^_^;) ★

ということで、本年も最後の最後まで講釈タレに終始してしまいました。誠に申し訳無い。m(__)m

どうか 愛想尽かさず、来年も宜しくお願い申し上げ奉ります。

皆様により良い新年が訪れますよう・・。

 

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