古い記事で触れたことがあるが、昭和の話題を語り合う上で唯一寂しさに苛まれるのが「訃報」である。
この世に生を受けた者である以上、いつか土に還り天に召されることは避けられない事実であり、万人が通る帰還の門であるわけだが、どのような足跡であれ世に名を残し大きな影響を与えられた人たちの逝去は、それだけに名残が尽きない・・。
ほんの数分、読んで 懐かしさや書き手の愚かしさ?を楽しんでいただくことが旨の「昭和テロップ」。 故に、当ブログでは あまり “訃報” に類する記事を取り上げないのだが・・。 先日、水木一郎 氏が他界された。昭和の半ばならともかく現代において74歳というのは早世と言えるだろう・・。遺されたものの大きさは多くの人の知るところだ。
ということで、これを機に年に一度だけ、その年に彼岸に発たれた方々を振り返り偲ぶ記事を置くことにした。 尚、いつものことながら 私個人の偏った?ピックアップなので、そこのところはご容赦願いたい・・。
「海部俊樹」氏 2022年1月9日 91歳没
首相という職責は外から想像する以上に激務なようで、組閣・官邸階段前での撮影時にニコニコ顔であった人が、1年後には相当なお疲れ状態というのは珍しくない。
昭和生まれ初の大臣、ニューリーダーとして颯爽としていた彼が、内閣総理大臣 就任後一年と経たぬ間に頭髪にその苦労を滲ませ、内閣末期には殆どズタボロ状態となっていた・・。(誰のせいだとは言わないが・・w) その後のことも含め、政治家としては稀有とも言えるほど、基本的に真面目な性格であったが故の苦労だったのかもしれない。
その割に享年91歳という大往生を遂げられている。やはり “大物” であったのだろう。
「松鶴家千とせ」氏 2022年2月17日 84歳没
「シャバダバ〜♪ シャバドゥビ〜♪ イェーイ♪ ・・」当ブログでも昨年3月に取り上げさせて頂いたばかりだったのだが・・。
記事題名「アメリカに行きたいから割り箸で髪巻いた」の如く、”それをしたいから” “目立ちたいから” “有名になりたいから” の気持ちを、自らに偽ることなく邁進し続けてきた彼の人生。 “流行り” であるが故に “廃り” も受け止め、なおも歩みを止めなかった生き様に敬意を評したい。 急な他界はまさしく人の命の「わっかんねぇだろうな」を体現するところとなった・・。
「上島竜兵」氏 2022年5月11日 61歳没
「押すなよ! 絶対に押すなよ!」何に押されてしまったのか 向こう側にまで行ってしまった。こういうのが一番悲しい・・。 のだが、リアクション芸人・コント芸人の雄たる彼への手向けは涙を流すことではないのだろう・・。 昭和末期に結成、活動してきた「ダチョウ倶楽部」、近年のコメディアンとしては(私的に)笑えるトリオであっただけに残念である。 一足早く発たれた “志村けん氏” と一緒に “向こうの住民” を笑わせていただきたい。雲の端から「押すなよ!押すなよ!」で もう一回落ちてこねーかな・・(^ ^;)
「渡辺宙明」氏 2022年6月23日 96歳没

“地上の音符” シリーズで取り上げたいと思っている内に先に行かれてしまった・・。
昭和の映像音楽をリードした偉大な音楽家のお一人である。
特に「キカイダー」シリーズ、「スーパー戦隊」シリーズ、「仮面ライダーBLACK」「マジンガーZ」などで築かれた作品の数々は、そのアップテンポな曲調と相まってアニメファンの耳に深く刻まれている。 先の記事 “映像の幕間のアイドル “ でも触れた1985年作「戦え!!イクサー1」におけるサウンドトラックは、その集大成のひとつともいえよう。
この6月には他にも「葛城ユキ」氏、「山本コータロー」氏など著名な音楽関係者が他界されている。
「小林清志」氏 2022年7月30日 89歳没
語るべくもない。 “次元大介” である。アニメキャラクターとそれを担当する声優が融合を果たしたとき、そこに魂が宿る。渋みの効いた独特の声調であったが故に “次元” とのマッチングも自然であったのだろうが、50年に渡って続けて来られればそれはもう “次元そのもの” であろう・・。後任の大塚明夫氏に引き継がれ勇退をなされた折に残された言葉・・。 「ルパン。俺はそろそろずらかるぜ。あばよ」 が泣かせ過ぎる・・。
「ミハイル・ゴルバチョフ」氏 2022年8月30日 91歳没
このページを訪れてくださる方の大半が戦後生まれの昭和育ちである。つまり私たちが知る昭和の “米ソ” とはイコール “冷戦の時代” であった。 “第3次世界大戦” や “核戦争” の脅威が囁かれた時代でもあったのだ。
そんな “ソ連” に文字通り “革命” を断行し、改革開放と冷戦の終結をもたらした彼の偉業は、日本が昭和から平成へと移りゆく頃の世界に一筋の光明を見出した。 しかし、それ故に身に受けた逆風はあまりにも強く、後の人生は決して恵まれたものではなかった。 理想と苦悩の間で格闘された人生もようやく安らぎのときに至ったことになる。
時代の流れに完全に逆行しているかのような、現在の “ロシア・プーチン体制” を見ていると、思想や主義・政体 以前に、人間そのものの弱さ愚かさを目の当たりにしているようで、何とも虚しい・・。
「佐藤蛾次郎」氏 2022年12月10日 78歳没
個性派俳優であった。ご本名は “佐藤忠和(さとう ただかず)” さん。キャラクターに違い真っ当な・・というか、戦国武将のような立派な お名前である。 『男はつらいよ』テレビ放映時代から同番組・映画の ほぼ全てに出演、渥美清が最も心を通わせていた共演者のひとりであった。
いつも市井の端っこで、どうしようもなく、見栄えも甲斐性もないように生きている男の役柄を演じているが、人生の綾を知り尽くし、人を愛し愛される術を身に着けていたが故の名演であろう。 先に旅立たれた奥さんのもとに ようやく行けたことは至福といっても良いんじゃないだろうか・・?
他にも今年は「藤子不二雄A」氏、「西郷輝彦」氏、「ジェームズ・カーン」氏、「オリビア・ニュートン・ジョン」氏、「聖悠紀」氏ら・・・。
年末になってからは「六代目 三遊亭円楽」氏、「アントニオ猪木」氏、「仲本工事」氏、「渡辺徹」氏、冒頭で触れた「水木一郎」氏、また「あき竹城」氏 などが相次いで逝去された。
そして 7月8日には「安倍晋三」氏が凶弾に倒れている。享年67歳 ある意味、近年の日本において最も衝撃的な訃報であったかもしれない・・。
如何な時代になろうとも、人の寿命を図ることは出来ず その “逝き様” を選ぶことさえ難しい。せめて悔いの少ないような “終い” にするべく己が “生き様” を考えるのみである。
そして、先人が残してくれたものに感謝を捧げよう。
皆様、ありがとう。アチラでもご達者で・・。