今回は書く前に気がついた。
最初「あぁ兄弟!」とか何とかの題名で、あの名車・迷車「マツダ・ランティス」を取り上げたかった。 同じネームのバリエーション車として登場しながら、セダンとクーペで面構えも後ろ姿も相当に異なる、 異彩のブランニューカーだった。
同じ母胎から生まれ基本は同じながら、見た目も性格も全く異なる ある意味 “リアルな兄弟” に例えてみたかったのだ。
マツダらしく、ハンドリングや走行性能を前面に押したてたCMがキャッチーであり、実際、そのような車であったが、反面、どういった層・ニーズをターゲットとしているのか分かり難く、結果的に販売面では成功しなかった。
まさに “タチビな車” の要件バッチリである。・・しかし、販売期間が 1993年9月 – 1997年12月 と “平成テロップ” である・・残念・・。
と、いうことで、今回は この「ランティス」の前哨戦とでもいうべき? 昭和終盤のマツダの迷車『マツダ・エチュード』を取り上げる。
* カメラワークが素晴らしい!
『マツダ・エチュード』 ・・良いと思うんだけどな〜 こういうスタイル・・。
サッパリしてて少しオシャレで・・、マツダのコピーに倣うと “センシブルで都会的で・・” という感じ? 私にピッタリ! ・・とは誰も言ってくれんがw。
田舎でしか生きられん私に合うかどうかはさておき、個人的にこういったヨーロッパ調のさり気ないスタイルは結構好みである。
現在の車の大半に興味が沸かないのは、単に私の感覚が時代に付いていけていないことが主因ではあるが、 一つには近年、ミニバンやクロスオーバー車の割合が大きくなったことも手伝ってか、やたら押し出しの強い顔やスタイルが多いような気がして食指が動かないのである。 何かにつけ自己主張や承認欲求に溢れる世相を反映しているかのようにさえ感じてしまう・・。
それに引き換え「エチュード」は控えめである。俺が!俺が!と出過ぎた自己主張をしない。 それでいてクリーンで知的な美しさを讃えている。
3ドアハッチバック タイプのエクステリアは、後半にかけて両サイドからリッドまで、一枚のガラスで巻き込まれているかのような処理がなされている。 その上でテール周りはダーク基調で厚みを持たせながらもワイドに仕上げ、決して車格が大きいといえないこの車にワイド&ロー感を与えている。
いずれも、ハッチバックならではのスタイリングを活かしたデザインの妙であろう。
室内・インテリアに関しても、実にシンプルでいてエスプリに富んだ空間となっている。 ライトグレー、またライトグレー&ブラックのツートーンで織りなすシックな仕上げは、現在でも かなりオシャレな案件にのみ用いられる手法である。
インパネ周りは少々80年代・直線基調、ジウジアーロだのベルトーネだのの影響・残滓を湛えるが、当時のミドルカークラスとしては妥当な範囲であろう。 ドア内張りの薄さ、フロアコンソール周りの貧弱さも、トヨタを除く当時の他メーカーとしては こんなものであったろうと思う・・。
知性を優先した車作りから、ターボさえ搭載しなかったが、1.6・1.5リッターDOHCのエンジンはよく回り、走案性の高い足回りもファミリア譲りであった。
そう、ファミリア譲りなのであった・・。
元々、ファミリアベースのバリエーションとして企画・発表された この『エチュード』
独立した車種でありながらも、世間から見れば、あくまでファミリアの一車種でしかなかったのだ。
一説にだが、マツダにして曰く「前方から走って来たのを見るとファミリア、しかしすれ違うと、オッ!何か違う!? 」 それほどまでに “さり気ない” インテリジェンスを身にまとった車・・ らしいのだが・・、それじゃ分からん人が大半だったようである。
4代目で火が付き、5代目XGで爆発的な売れ行きを示した「ファミリア」、”ホットハッチ” や “ボーイズレーサー” の言葉を導く一端ともなり、社会現象とまでいわれた当時のファミリアブームであったが、「エチュード」が発売された昭和62年(1987年)には、さすがにその熱も冷めていた。
元気・闊達、使える車で売った「ファミリア」の展開、異なる性格の兄弟車として、マツダは “品性とウイットに富んだ さり気なさ” を提示し、”センシブル・ピープル” に訴えかけた。 しかし、マツダが求めたニーズは掘り起こせなかった。
マツダ自身がのたまうほど「すれ違ってから何となく違う」レベルの訴求性では、そもそも誰も気づいてくれなかったのだ。
どちらかというと日本人はヨーロッパ的なセンスそのものに疎いところがある。地味さの中に控えめに、しかし確固とした主張を息づかせるという手法は、あまり功を成しにくい。
要するに “分かりやすい推し” や “見栄えのするブランド名” がないと興味を惹かれないのだろう。
70年代の終わりから80年代にかけて、トヨタが売り出した初代・二代目「ターセル&コルサ」は、取り回しの良さと経済性で そこそこ売れたが、そこに息づく見事なヨーロッパ的パッケージを理解している者は殆どいなかった。・・しかし、まぁそんなものなのだろう。
やはり 商売の上では、多少喧しくても押しが強すぎても “分かりやすい” ことが一番なのかもしれない。 それで言うなら現代の多くの車は理に適っているのだろう・・。
PS : 文末にAmazonのafリンクを貼ろうと “マツダ エチュード” で検索したら、松田聖子の「野ばらのエチュード」 ばかり挙がってきたw。 トゥルリラ ♪ トゥルリラ~♪ ・・