ロ〜ンブロゾ〜

顔に時計の針と、カタカナによる “ライダー” の文字(仮面ライダージオウ)・・分かりやすいというか、最近の仮面ライダーはユニークだな・・と思っていたのが 2〜3年前。

画像 © テレビ朝日

「今度のライダーは世界最強の社長だ!」(仮面ライダーゼロワン)とか言われるともう??・・現代のヒーローは実務性も兼ね備えているのか?。 その後「文豪にして剣豪!」(仮面ライダーセイバー)、そして先月まで放送していた(仮面ライダーリバイス)が「ヒーローと悪魔が相棒…つまり最強!」らしい・・。

いずれもしっかり鑑賞していないので、内容については触れられないが、ヒーローに求められるスタイルも、年々変わり続けているということなのだろう。

 

昭和のヒーローの多くは その正体を隠し続けるのが通例であった。普段は目立たない存在であることも多い。 今にして考えてみれば、当時のヒーローさん方どうやって糊口を凌いでいたのだろう?と思えなくもないw。 「ど〜この誰だか知〜らないけれど♪」以降、否、それ以前からヒーローの出自は霧に包まれていたのだ。

そんな中でも最も所出不明の一雄が「黄金バット」であろう
歌も出だしから「どこ? どこ? どこから来たのか 黄金バ〜ット!♪」なくらいである。

当時から不思議な印象は強かった。 骸骨そのままという一見あまり有り難くなさそうなモチーフもさることながら、歌詞のままに全くといっていいほど、その出生が明かされていなかった。(一部 何処かの遺跡からという話はあったが・・) 正太郎少年もハヤタ隊員も本郷猛も “普段” を何となく想像できるが、「黄金バット」にあっては何一つ思い付かない・・。

 

事件勃発→悪役の活動→「あ!コウモリさん!?」→「ワハハハハ!」バット登場。という定型パターンであり、セリフも少なく 事件の解決とともに即時撤収してゆくので、勧善懲悪のカタルシスはあっても、バットの素性や心情が終始謎のままである。

と、いうのも然もあらん、この「黄金バット」元々は昭和のはじめ、紙芝居師によって生み出されたダークヒーローであったようだ。

専門の漫画家や脚本家による著作ではなく、市井の紙芝居師による創作というのが また興味深い。 市井の・・とはいえ、彼らはキャラクター原案から脚本、描画制作からセリフ回しの創案まで、全てひとりで こなしての作品なので、考えようによっては超の付くマルチプレイヤーともいえる。(無論、受け売りで商う紙芝居屋も多くあった)

画像:海外版Wikipedia より

戦前戦後を通して大ヒットとなった「バット」は、やがて漫画に取り入れられ映画として興され、ついに時代の寵児 “テレビ” のヒーローにまでなった。

著作権や印税の感覚がほぼ無かった当時だけに “それだけ” に終わってしまったが、現在ならば億万クラスの収入につながったのではなかろうか・・。

画像:海外版Wikipedia より

著作権不在・無断で勝手な受け売り(複製)が重なり広まったことで、「バット」に関わる 基本的な設定が 曖昧になってしまったことも、彼を謎に包ませる一因となったのかもしれない・・。

そして それ以上に、そもそも彼は生まれた時点で正義の味方ではなく “アンチヒーロー” であり “怪盗” であったようだ。 その名も「黒バット」言い換えるなら “怪傑” というやつだろうか。 こういう怪奇趣味的な作風は大正期後半から昭和初期に醸成したアングラチックな文化も関係していよう・・。

その アンチヒーロー「黒バット」を最終話において打ち破り、一転、正義を高らかに表したのが「黄金バット」であり、後に続く大ヒットキャラクターであったのだ。 そりゃまぁ、一から無理やり追加設定でもこじつけなければ “謎なヒーロー” だわなw。

 

(ここらへんからTVアニメの話・・)「黄金バット」とともに異彩を放ったのは、敵役「ナゾー」、悪役よろしく四つの目、悪魔のような耳、片腕が掴み鈎、そして下半身が円盤の中という、いかにも・・を通り越して、当時としてはかなりエキセントリックな造形であった。

こちらの画像も海外BBSより。海外でも人気が高い。

時に口にする「ロ〜ンブロゾ〜」の叫び? ワードが何を意味するのか分からないが、単なる悪の首領に収まらない独特の存在感を見せていた。 原典に近い設定では復讐のために自己改造した “黒バット”、アニメ版においては元ナチス絡みのマッドサイエンティストという形であった。 どことなく大人っぽさを感じたのはそういう設定故なのだろう・・。

正直なところ、内容はさほど明確に覚えていない。 主人公?の少年がいつもチロルハットを被っていた。パツキンの少女は「あ!コウモリさん!?」の担当だった。確か透明の怪獣が現れて、その対処にペンキをぶっかけて位置を把握し、バットが退治していたような回があった。・・などが記憶の一片だが確証は薄い・・。

 

ともあれ、多くのヒーロー漫画・アニメと異なり、市井の創意工夫から生まれた、それも元はアンチヒーローという、ユニークでダーク、個性的な作品は時代を超えて今も色褪せない。 正義と悪が表裏一体という人間本来にも根差すバックボーンを抱えながら、それを感じさせない秀作であったのだ。

しかし、原典からの広がりが曖昧であったせいか、今も閲覧出来る数多の画像見ていると、その外観・スタイルを含めて、そこから感じ取れる “黄金バット像” も多岐に渡る。よく知ったアニメ版が多いのは当然ながら、子供が見たら泣き出しそうなもの、中世ヨーロッパ貴族風のもの、どう見てもタチの悪い小悪党風のものまで様々・・。

曖昧が故にここまで大きく広がったのであろう。
そして、こういった揺らぎを楽しむのも、この作品の醍醐味なのである。ロ〜ンブロゾ〜・・

 

 

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