その日、日が暮れとともに友人と二人で出掛けた。・・・前回と同じやんけ!!
まぁ そんな感じで、下らないことに限って二人三人と同志を募り合い行動する、嘆かわしくも切なく、そして愉快な青春時代だったわけだ・・。
目的と言えば・・ ストリッ・・「ミュージックホール」である・・。
草食系だの何だの、現代の若者はどうなのかは分からないが、当時、学校(高校・大学)を卒業して働き出した世代(男子)が、先ず求めるものは “車(もしくはバイク)” “オーディオ・カメラ” 辺りの製品。 そして恋人と・・(それはそれとして)w湧き上がる性に対する渇望の昇華作業であったw。
ミュージックホール見学? もその一環であり、音楽と踊りの見聞、決して劣情のみで行動していたわけではない・・わけないw。
前回において「ピンク映画(成人映画)館」も昭和の終わりとともに落日を仰ぎ、平成の中頃迄には その大半が失われたことを述べたが、ミュージックホールも同様、時期的に若干の差こそあれ バブル期をピークに、その後は衰退の道を辿っていった。
世が景気低迷に喘ぐ中、遊興費の出費は大幅に抑えられ、同時に性にまつわるメディアが、家庭内の映像機器やパソコンで事足りるようになると、実演による享楽へ足を運ぶ者の急激な減少をみたからに他ならない。
ミュージックホールは、およそ二手ともいえる分け方が出来ようか。 主に温泉地など泊りがけで出かける観光地に内在するもの。 そして、町の歓楽街などの一角に劇場を構えるものだ。
昭和の頃は、主に会社などによる団体旅行が盛んであった。 正直、観光というよりも親睦・慰安旅行としての側面が強く、行けば 酒、カラオケ、宴会、麻雀、そして夜には観光地のバーやミュージックホールへ急行・・といった案配である。(個人的にはこういうの苦手だったのだが・・(^_^;)
バブル崩壊以降、会社も存続に手一杯で慰安旅行など厚生費の余裕が無くなった。同時に社会的な価値観も変わり、団体旅行でバカ騒ぎするより 個人・少人数で好みの旅行を楽しむ方向へと推移し、それまでの旅行の方向性が変化していった。
温泉地などの夜の饗応で生計を立てていた人々、その施設などの多くは過ぎゆく時代の面影として形を残すばかりである。
そして、その流れは多かれ少なかれ、都市部にあった遊楽施設にも同じような影響をもたらしている。 限りのある収入と合理的・個人的指向の中では、古き形態の “お遊び” は消え去ってゆく運命なのかも知れない・・。
ネット上の情報では「日本におけるミュージックホールの創始は1947年、ピーク時の1966年頃には約300軒、しかし2000年代に入って数年で3分の1にまで減少、2016年現在は往時の10分の1」らしい。
私が友人と足を運んだ40年前、当地(地方都市)には おそらく2~3軒のミュージックホールがあったと思う。 その後 数年のうちに相次いで閉館した。
成人映画館やミュージックホール、世の中からこういった施設や職業が消えてゆくのは、広義な意味では良いことなのかもしれない。 公序良俗だの女性の人権や安全を考えればなおさらである。 性風俗に商売が絡めば必ずといっていいほど様々な問題が付いて回る。
しかし、”性” というキーワードにことさら忌避感をもって、あらゆる全てに蓋をしてしまおう、流し消してしまおうという、という観念にも疑問を拭えない。
衛生ばかりを追い求めて過度にクリーンな世の中を作り出したら、いつしか無菌室でしか生きられないような人間ばかりになってしまう。 圧殺するばかりでなく正面から向き合い、有効な対応と共存を模索すべきであろう。 ”性” は元々、人間と不可分かつ根源的なものなのだ・・。
と、まぁ、いつもの如く能書きタレに落ちてしまったが・・、
そもそもの友人と訪れた日暮れのミュージックホール・・。 入口の手前 50m程の所で そそくさと引き返してしまった。 入口付近に座っていた兄ちゃん方(呼び込みや案内係・おそらく その筋系の人)が、私たちを目ざとく見つけてスッと立ち上がったからである。 成人映画編と異なりこちらは『Mission failed!』であった。
もう本当に根性なし!・・、気分だけ社会人、世に出かけのヒヨっ子であったがゆえのヘタレ話であるが、こんな下らない想い出でも今となっては懐かしいのである・・。 今では失われる際のピンクネオンな文化、あの時行っていなかったのが悔やまれる・・。
数年後、所用があって大阪に出掛けた。
ミナミの辺りだったか・・。 先を急ぐ私に声がかけられた。
「兄さん、兄さん! チョッと寄ってかない? のぞき部屋! 10分たったの三千円だよ!?」
夏場で暑いし、急いでるし、こんな真っ昼間からそれどころじゃない。
「あ、あ〜、悪いけど今日のところはパス!で・・!」
「何だよ! いいじゃないの!もう・・ スキそうな顔して!」
うるせーよ! ほっとけ!