味覚の栄養ドリンク

「元気ハツラツ! オロナミンC!」は ご存知 大塚製薬の炭酸栄養ドリンクである。

先ずは飲みやすさ・美味しさ・爽快感を重視して開発が進められたため炭酸入りとなり・・、そのため 当時の厚生省から “炭酸飲料” としての認可しか下りず・・、また それが故に薬局以外のスーパーや駅売店での取り扱いが可能となって・・、

結果的に半世紀を優に超える大ヒットとなった、稀有なミラクル商品である。
歴代 巨人軍選手を起用したCMも数多く作られたが、街角看板のせいか、コンちゃん(大村崑 氏)とセットのイメージが強い。

栄養ドリンク・・といっても、まぁどの程度の効果があるかは明確ではないが・・、取りも直さず あの味は美味しい! 万人の口に合うかは分からないが、少なくとも身の回りでオロナミンCが嫌い・美味しくない、というのはあまり聞いたことがない。

只 まぁ、サイズ的にやや少なめなので若干の割高感は拭えないが(炭酸飲料として)、たまに気が向いたら飲んでみたくなる、そんな気心の知れた旧友のような存在でもある。

また、57年経った今でも発表当時そのままのデザインボトルであることも、私にとって大きな評価ポイントである。昭和を今に伝える貴重な語り部なのだ・・。

 

栄養ドリンクの もう一方の雄といえば・・、色々あるだろうが やはり大正製薬の「リポビタンD」ということになるだろうか・・?

「ファイトー! イッパーツ!」のキャッチフレーズが、いつ頃から使われたのかは分からない。昭和50年代前半位からだろうか?* オロナミンCに比して、こちらは “医薬部外品(現在 一部第2類医薬品)” ながら、何となく医薬的効果がありそうなイメージだった。(* 調べたら52年だった)

味は・・飲みやすいが、オロナミンCとは明確に異なる。医薬品よりな味覚で一度に何本も飲めるようなタイプではない。 それでも王さん(王貞治 氏)に始まって「ファイトー!・・」を定着させた勝野洋&宮内淳 氏らのCMもあって、栄養ドリンクの代表的商品であり続けている。

昭和期には我が家でも結構飲んでいて、その後 私自身は久しいが・・、
「70歳なんて、とても、とても・・」と言っていたはずのオフクロ、80代も後半、今でも時折 口にしている。 飲まなくても割と元気だと思うのだが・・90はカタいだろうよw

 

他に「グロンサン内服液」(ライオン←中外製薬)、「チオビタドリンク」(大鵬薬品工業)、「マムシグロン」(阪本漢方製薬)「Q&Pゴールド」(KOWA)、「チョコラBB」(エーザイ)、「ユンケル黄帝液」(佐藤製薬・昭和42年発売と意外に古い)、そして「アリナミンV」(アリナミン製薬←武田薬品)など、世界に冠たる?w 日本の栄養ドリンクカテゴリー、正に百花繚乱の歴史を歩んできた・・。 ”月月火水木金金” だった昭和社会ゆえの現象か・・w

 

・・と、ここまで来て まだ本記事に登場していない昭和 栄養ドリンクの一本が「アスパラC」(田辺三菱製薬←田辺製薬)である。

前述のドリンク群と同じく現在も発売を続けているが「アスパラC」の商品名は既に失われていて、現在は「アスパラドリンクDX」「アスパラドリンクα」「アスパラMAX」の三商品となっている。

発売時よりほとんど商品イメージを変えない「オロナミンC」や「リポビタンD」「ユンケル黄帝液」「アリナミンV」などに対して、他の商品は多かれ少なかれ外装デザインやバリエーション商品の追加を果たしてきた。

「アスパラ」ドリンクも後者の部類に入るのだが、何故この一本をわざわざピックアップしたかというと、昭和40年代、自分に馴染みが深いからである。

当時住んでいた家(銭湯)から歩いて数分のところに薬局は2軒あった。そのうち 中通りに面した場所に建っていた1軒に、時折 お使いにやらされていた。 胃腸の弱かったオヤジのために “太田胃散” を買いに行かされるのである。

・・で、ついでに買ってきてくれと頼まれるのが「アスパラC」ドリンクだったのだ。
何故「アスパラC」だったのかは分からない、古頭のオヤジにしてみれば「オロナミンC」は、ただのジュースみたいなもののように思えたのか、「リポビタンD」は割高だったのか・・。

ともあれ、稀におこぼれで口にした「アスパラC」は私にとって、実に不思議で・・ “割と美味しい” 妙味だったのだ。

あれが “アスパラ” の香りなのかは分からないが、例えが見つからないような “爽やかさ”、オロナミンC ほどではないが絶妙な甘さ、(おそらく誤った記憶だと思うが)炭酸を含んでいたかのような・・ 当時の自分にとってはそういう味覚だったのだ。

普通のジュースさえ、そうそう買ってもらえるものではない当時の暮らしの中で「アスパラC」の味は、ほんの数回味わった貴重な・・そして今は懐かしき味わいである。

ストリートビューで見ると今もその店の名残が・・

平成になった頃、ふと思い出して買ってみたことがある。 まるで違う味になっていた。
思い出の中の味なので多分に美化されているところもあるだろうが、後の世の「アスパラC」は、名前こそ同じものの昭和当時とは全く異なるベクトルで製品造りをしていたのだろう。(おそらく飲みやすさより健康指向で)

瓶の表面にダイヤカットを持つ「オロナミンC」、ツルツルスムースな「リポビタンD」、これら2点は今でも当時のデザインを保持し続けているが、40年代の「アスパラC」は細かいグルービングが施されていたように記憶している。

あの味わいはもう戻らない・・。失ったものほど 脳内で美化されて生き続けてゆくのだ・・。

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[ イナバナ.コム ] において、オロナミンC / 大塚製薬、 その社風と生誕の地 “鳴門市” に興した「大塚国際美術館」について記事にしています。よろしければ ご一覧ください。
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