用心棒からポリデントまで

芸人さんであって腕っぷしの良い方、拳闘技などを本格的にやっていた人などは時折存在する。 ジェリー藤尾、石倉三郎、渡瀬恒彦、安岡力也、岩城滉一・・武勇伝に事欠かない人は意外に多い。 ミュージシャンであり俳優でもあったジョー山中、喜劇俳優であった たこ八郎 など、ともにプロボクサーの経歴を持ち、無類の喧嘩強さを誇ったという。

とはいえ、俳優業でもある中 やはり暴力沙汰につながる話になるためか、そういった話をことさら語る人は少なく、拳闘技の経験などもあまり顕にすることも稀なようだ。 そして修羅のごとく立ち回った過去など微塵も感じさせぬまま、与えられた役回りを演じきってしまう・・。

 

私にとって、その方のイメージとはまさに “出目徳” であった。

出目徳 = デメトク 名のごとく都合の良い “目 / 役” を都合良く出せる手技を持つ、生粋の雀士でありイカサマ師でもある。 裏街道をひた走る・・というより、全てが失われた戦後の荒廃期を寡黙に、そしてしたたかに生き延びようとする一介の初老の男・・。

おそらくは、極めて普通の人であろう妻を持ち あばら家を住まいと据えながら、指先と目利きのみで金を稼いで帰る。それはまるで定年間際の勤め人のように・・。

そんな、時代の映し鏡とでもいえそうな “生” の人間を見事に演じたのが『高品 格(たかしな かく)』である。

16の歳で単身 上京しプロボクサーを目指し、一説にフライ級のチャンピオンにまで上り詰めながらも昭和13年、一遍の映画に感動を覚え俳優を目指すことを決意、以降、大映を経て日活に所属し、いぶし銀のごとき俳優人生を歩むこととなる。

石原裕次郎主演「嵐を呼ぶ男」でボクサー崩れの用心棒「健」役で足場を固めた後、時にアクの強い、時に不調法ながらも滋味あふれるオヤジ、など人間味に満ちた脇役に徹し、ドラマを土台から支え続けた。

大正生まれであり太平洋戦争にも応召され、名実ともに “昭和の男” であったが、仕事に対する融通は効き 役回りに固執することはなかった。

当初、ボクサー出身であることを活かして荒くれ者的な役柄が多かったものの、頑固な刑事役や朴訥とした父親役など守備範囲を広げてゆく。 子供向けの番組である「ロボット刑事」にレギュラー主演(芝大造 刑事役)した他、「ウルトラマンA」や「快傑ライオン丸」などにも出演された。

“プロの脇役” の道を歩き続け、数多の人間臭さを紡ぎながら辿り着いた ひとつの完成形、集大成ともいえる極地が「麻雀放浪記」の大場徳次郎こと “出目徳” として結実したのではなかろうか・・。 そう、出目徳は高品格以外では成しえないのだ。

出演は映画・ドラマにとどまらず、CMにもちょくちょく顔を出されていた。小林稔侍と共演した缶コーヒー「キリン・ジャイブ」のCMも話題になったが、それ以前から「サントリーレッド」にては演技の幅を広げていた。 入歯洗浄剤「ポリデント」のCMでは好々爺を鷹揚に演じていた。

高品格にとって 多くの受賞にも値した “出目徳” の出来が、たとえ集大成の出来だったとしても、それはあくまで通過点のひとつだったのかもしれない。 ドラマとはこういった人達によって輝きを増すのである。

(文中 敬称略)

 

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