年に一度・・位だよな、映画館に連れて行ってもらったのは・・。
子供の頃、夏休み前ともなると学校の門前で映画の割引券が配られることが多かった。
学校そのものとは関係ない、業者さんの営業の一環であったのだろうが「東映まんがまつり」「東宝チャンピオンまつり」と、行ける行けないはともかく、その色鮮やかなチケットをもらうだけでも嬉しかったものだ。 親にしてみればあまり有り難くない御札だったのだろう・・w。 教育施設前での販促ということからか、いつしかその姿を見なくなって久しい。
映画館は得てして繁華街に立地していることが多く、その意味でも 子供たちだけで行くことは禁止されていた。現在でも小中学校ではそうじゃないのかな・・。
畢竟、親、もしくは保護者に連れて行ってもらうことになる。
そちらの立場からすれば、見たくもない映画に自身の費用も払い、2〜3時間の時を割いてまで子守をするのは、やはり負担であったのだろう。
さて、見たかった映画を見れば満足! ・・なはずだが、そこはやはり子供、映画そのもの以外にも目について止まないものがある。
「東宝パーラー」 東宝系映画館にあった喫茶&レストランであった。
ねだって入れたことがあっただろうか・・ あまり記憶にない。
きらびやかなショーウィンドウに、家では絶対 口に出来ないような可愛らしいケーキやパフェ、洋食の類いが並び、おいでおいでと私に手招きをしている。
何度か入ったことのある、デパート最上階のレストランと大差なかったのだろうが、その時から私にとって「パーラー」とは夢の国・美食の国のイメージが定着してしまった。
あまり行くことも叶わないままに年月が経ち、パチンコ屋がパーラーと名乗っているのを見て唖然としたのを覚えている。 まぁあれもパチンコを打つ人にとっては夢の国なのかもしれないな・・。 その割には怒りながら出て来る人も多いような気がするが・・w。
いつしか「東宝パーラー」は 夢と消えて無くなり、「パーラー」そのものの呼び名も旧時代のものとなって、使われることも希少となった。 東京や大阪、都市圏などにはまだいくらか在るのかもしれないな・・。
古式な呼び名で思い出すなら「ヘルスセンター」もそうだ。
現在で言うなら “健康ランド” が それに近いか・・。
入浴施設があり、畳敷き大広間の休憩・食事処があり、遊技場がありといった感じだ。
内容的には “健康ランド” とほぼ同じだと思うが、子供だったせいか 現代のものより規模が大きかった気がする・・ 何せレジャー集約型の施設、モータリゼーション勃興、車とレジャーの結び付きが高まったことが背景にあるのは想像に難くない。

検索をかけると “船橋ヘルスセンター” “かつてあった・・” と出て来る。
関東在住でなかったので知らないが、当地域では著名だったのだろう。自分の記憶は朧げだが “東海ヘルスセンター” のようなものがあったような気がする。
こちらもまた現在では使われることは殆どない。
最後に・・小学生高学年の頃、住んでいた所に「グランドパレス」なる施設があった。
レストランとバー、宴会場などを備え それなりに賑わった建物だったと思うが、昭和の終盤に消えて その跡地には大きな駐車場を擁したコンビニが建った。
昭和の頃には この “パレス” なる呼び名もよく使われた。こちらも今使うと懐かしい感じが否めない。
「パーラー」 も「ヘルスセンター」も「パレス」も、そして「ホール」や「ドライブイン」までも、時の流れとともに過去のものとなってゆく。
名は変われど、やっていることは50年前も今の施設もさほど変わりはしない。
人の求めるところは時代が移っても似たようなものだからだ。
しかし、それでも古き呼び名に愛着を感じるのは、その時代を生きた者、その時代の風を知っている者であるからなのは言うまでもなかろう。
思考と感覚の固着というものかもしれないが、無理をしてオシャレに励んでいたかのような、あの時代が今も愛おしいのだ。