かなり遅筆な方である。 一記事書いて画像などを用意、WordPressに落とし込んで仕上げるのに丸一日掛かる。イナバナ.コムも含めて基本 平均一記事1500〜2800文字を目処に週4本書いているのだが、本業との兼ね合いもあって正直カツカツの状態である。
泣き言並べても仕方がないのだが、本当 速筆の人が羨ましい。 ネットで見ると「遅筆なのは悪いことではない、内容が大事!・・」などと出ているが、こちとら内容も薄いので何ともはや・・ 鋭意精進してまいりますので何卒ご容赦のほどを・・。
石ノ森章太郎という “萬画家” はとんでもなく速筆(速画?)な方であったようだ。
私は漫画を描いたことはないが、かなり大変かつ濃密な作業であろうことは容易に想像できる。週刊連載や日刊の4コマ連載の漫画家さんなどは、アシスタントがいたとしてもさぞかしハードな仕事だろうなといつも思う。
それを「昔(赤塚不二夫と2人で描いていた時代)は月650枚という無茶もやったが、最近では歳だから300枚でフウフウいう(Wikipediaより)」 ・・というのだから、一日あたり10〜20枚、週刊誌連載の作品で毎日1本以上描いていたことになる。
いわゆる “トキワ荘” の面々、手塚治虫、藤子不二雄、そして石ノ森のアシスタントも務めた 永井豪なども随分と速筆・量産された方々だと思うが、石ノ森の作画スピードも並外れたものであったのだろう、まさに加速装置並みといったところか・・。
何にせよ昭和の社会・文化を推し進めた人々のエネルギー・バイタリティーには、敬服しきり、頭が上がらない。
昨年のとある記事で書いた一文 「石森章太郎(当時)の描くヒーローは その多くが影を背負って生きている。 正義を貫くべく日々 命がけで戦っていても、それを知る者はごく限られた人間のみであり、”普通の人生” に二度と戻れない自らの身上と相まって、そこに見事な “孤高のヒーロー” を描き出している。」
これは 石ノ森の萬画の中で揺るぎないテーマの一つだと思う。
ヒーローという名の、一見 社会から称賛されるべき者が 顧みられることなく、ともすれば異端の者として忌避されてしまう矛盾と悲哀・・。
それまでの「何処の誰だか知らないけれど・・♪」のごとく 身元正体は不明なれど、矛盾と悲哀を背負ったヒーローは石ノ森ヒーローからではなかろうか。
テレビ作品の上では当時の社会性から “勧善懲悪” ものとして描かれていたが、石ノ森の中には人の世の矛盾や “絶対悪・正義” への疑問が、作品へ大きな影響を与えていたのかもしれない。
とはいえ、石ノ森の代表的作品「サイボーグ009」、コミックで読まれた方も多かろうが、やはり多数の目に触れ記憶に残るのはテレビ映像作品の方だろうか。
テレビ放送版では3作品あるようで、第3作「サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER」(2001年10月14日 – 2002年10月13日)に関しては、私は全く知識が無いのだが 今回 調べてみるに、1、2作に増して原作を意識したニュアンスが感じられる。機を見て一度見てみよう・・。
畢竟、記憶に色濃いのは第1作(1968年4月5日 – 9月27日)そして第2作(1979年3月6日 – 1980年3月25日)ということになる。
第1作「009」は白黒放送だった。イメージ的にもモノクロームの記憶が強い。
当時、コミック版の方も読んでいたが、対ブラックゴーストなどの設定が無く、009達を狙う0010〜の刺客も出て来なかった。それでもそれなりに楽しんで見ていたと思う。 只、007 がスキンヘッドの子供キャラになっていたのには 違和感を禁じ得なかったが・・。
例によってオープニングテーマよりも、少々旧時代軍歌調のエンディングテーマ「戦いおわって」の方が好みであったが、OP「サイボーグ009」の方も捨てがたい。 如何にも当時のヒーローアニメソングだが、勢いと男らしさを感じさせる曲調はアニメソング史に残るマイルストーンであろう。
11年後に企画・放送された第2作「009」は 1作目に比して、より原作に寄せた世界観となっており、当時 制作側もかなり気合を入れていたように感じられた。(放送開始前の特報番組のようなものがあった) 007 のキャラクターも原作に合わせられた。
そして 第2作の目玉のひとつがオープニングテーマ「誰がために(たがために)」
009の世界を見事に表現した珠玉の一編となった。成田賢による個性的な歌唱も相まって独特の存在感を確立し、後のアニソンカラオケでも人気曲ともなった。2012年には再レコーディングも行われている。 年齢層によるが1作OP「サイボーグ009」と甲乙つけがたい名曲といえよう。
因みに私的には この第2作においても、エンディングテーマ「いつの日か」も捨てがたい一曲である・・。
“009シリーズ” はこれらテレビ作品以外にも、劇場映画版やスペシャル公開版が幾度となく放映されている。2015年には昭和の夏休みコラボ企画のような「サイボーグ009vsデビルマン」も公開された。
モンキーパンチによる「ルパン三世」、松本零士「宇宙戦艦ヤマト」、日本サンライズ(当時)発「機動戦士ガンダム」など、シリーズ化が確立され世紀を跨いで受け継がれる作品は他にも見られるが、「サイボーグ009」は比較的 初期のスタイル、原作の理念を守りながら続けられている作品と言えるのかもしれない。(vs デビルマン はともかく)
それだけ 石ノ森章太郎の思想が深く刻み込まれているのだろうか。
作者は彼岸に渡られてもその想いは生き続けるのだ。
(文中 敬称略)(追悼:成田賢 氏)