夢の黒い箱

昨日 投稿したイナバナ.コムの記事が「カバヤ・キャラメル」の誕生とその足跡に関するものだった。

戦後 尾羽どころか草木までも打ち枯らして一面の焼け野原となり、必要なものは皆目足らずといった世情の中、一箱はおろか一粒のキャラメルであったとて 当時の子供たち、それを見つめる大人たちにとっては、どれほどの喜び・安らぎとなったであろう。
物資 満ち溢れ、食うにも糖尿に気をつけながらの現代とはまさに隔世の感である。

“カバヤ・キャラメル” も含めて子供向けの商品でよくあったのが「オマケ」である。
どちらかと言うとカバヤよりも “グリコ” のオマケ” といった印象の方が強いような気もするが、キャラメル以外でも様々な菓子商品で展開されていた。

戦後復興から高度成長期にかけて隆盛した “オマケ商法” とも言えようが、もっと以前、おそらくは江戸時代後期〜明治期には 似たような商売の仕方があったのだろう。

因みに、菓子本体よりもオマケの方が主となる “いわゆる食玩” も「ビッグワンガム」で世間を賑わしたカバヤが草分けだったそうだ。

老いた親に言わせれば私も、みかん箱(←これも殆ど死語かな)に一杯貯めていたという “グリコのオマケ” 、大人から見ればただのガラクタでも子供にとっては宝石にも勝る宝物である。そこには無限の夢が詰まっていたのだろう。

そして これを上回るものに特別な “プレゼント景品” がある。”点数カードを◯点集めて応募しよう!” という類いのものだ。子供の夢が無限であるように商売の知恵もまた無限であるのだろう。

有名かつ定番(そして幾らか良心的)なものに「森永チョコボール・金銀のエンゼル」があることはご承知のとおり、私も一度か二度貰った記憶がある・・(が中身は忘れてしまった)(金のエンゼルを引いた記憶はない・・)
サイトを見ると現在でもやっているようだ、ある意味たいしたものだ・・。

“チョコボール” のように “当たり!” が出れば もれなく景品(もしくは同商品)が貰えるものも少なからずあったが、プレゼント景品の多くは “抽選制” それも期間限定であることが多かった。

それだけに多少なりとも景品も豪華で凝ったものも多く、そこへ “今でないと手に入らない” 希少性も加わって、いや増して子供の欲求を駆り立てる。

全くもってよく出来たシステムだと半ば感心半ば呆れるが、欲しいと思われる品を本体としてではなく景品として用意し、本体の売上げを伸ばす手法は子供向けの商品だけではなく、一般大人向けの商売でもよく見られるので、人の物欲や射幸心に適った売り方なのだろう・・。

 

数多にあった “プレゼントキャンペーン” の中で、とりわけ記憶に残っている景品がひとつある。

学校に上がる前の頃であったのか、それは家から少し離れた場所にある やや大きな市場の菓子屋、それも(当時まだ薄暗い)天井から針金のようなもので吊り下げられていた。
(懸賞商品であるのに 何故その菓子屋に現物が有ったのか謎だが・・販促用か何かなのか・・)

それは 一個の “黒いアタッシュケース※” 、これだけで「あれか!?」と思いあたった貴方は私の同類・同志であろうw。(※アタッシェケースとも)

「誰だ!?」「人呼んで “遊星仮面”!」 昭和41〜42年にかけて放送されていたヒーローものアニメの変身セットである。


〜 地球人と、太陽を挟んで対角側にあるピネロン星人は ある奸人の策略によって戦争状態となっていた。泥沼化する両星の諍いと徐々に追い詰められてゆく地球側の戦況打破のため、ある日 孤高の英雄が現れる 〜 といった感じの筋立て・・最終回?での母親との再会が印象的だった。

子供向けとはいえ中々練り込まれている。戦争の愚かさや それが一旦起こってしまうと誰にも止められない悲しさを湛えながら、孤独に戦う主人公の苦しみをも描きそこそこ大人向けとしても通用しそうでもある。

奸人の策謀による戦争の勃発というモチーフは古典文学にも時折用いられるもので、アニメで見るなら後年の「闘将ダイモス」などでも話の橋梁を成していた。

歌舞伎を思わせるような、それでいて女性的でもある長髪に、目元を隠すペルソナ(仮面)、ぴったりしたボディスーツにマント、と定番ながらもスマートさと若干の影を際立たせるヒーロー像は、当時の私に強い憧れを抱かせた。

その主人公が変身のための道具を詰め込み、常日頃 携帯していたのが件のアタッシュケースなのだ。「これがあれば僕も遊星仮面になれるかも・・」ような気になるのは、単純な時代の五六歳児には当然と言えよう。(現在の五六歳児ならもう少し賢くドライな気もする・・w)

 

連れられて行った市場の菓子屋、母親から・・
「アンタ、何か欲しいもの(キャラメルとか)あんの?」と聞かれ

「・・アレが欲しい・・」

「何アレ?鞄? お菓子と違うやないの?」

菓子屋の店主
「ゴメンなぁボク、アレは当たり物で売り物やないんや〜」

「・・(まぁ知ってるけどね・・)」

みたいな感じだったのではないかと思う。

 

変身の能力を手に入れることは叶わず、以来 60年近くヒーローになったこともない。

ヒーローにはなれず大した成果も残せずに来たが、近年 身体の方は徐々に変身が進んでいるようだ。それも腹まわりを中心に肥大化、タルミ化といった、あのスマートなヒーロー像とは真逆の方向へと変身が進みつつある。

世の流動や商売の技巧に愚痴たれてるヒマがあったら身体動かせ!ということなのだろう・・、それを教えてくれるヒーローがいなかったことが悔やまれるのだ・・

 

 

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