時期はとうに過ぎてしまったが・・、地元で ”盆踊り” を見なくなってから既に30年以上が経つ。 若い世代が流出してしまい世帯数も減少し、開催どころではなくなってしまったのだろうが、地域の人々が触れ合い楽しむ祭が無くなってしまったのはやはり寂しいところだ。
市開催の祭は伝統としての側面を持ち合わせるからか、今でも毎年開催されているが、その費用の調達にも中々苦労していると聞く。 近年は「YOSAKOI」という祭(踊りイベント)が隆盛し、若い人たちも多数参加して結構な賑わいなのだが、自然発祥のものでないだけに、もひとつ地域性の薄いことが気にかかかる・・。
祭の主軸たる「民謡・民舞」が既に現代の世相から乖離し過ぎてしまった感がある。
現代・・と言っても どこからどこまでが現代の範囲なのか微妙だが、昭和の中盤、テレビ普及の頃には既に民謡離れが始まっていたのではなかろうか・・。少なくとも流行歌溢れる 当時の若い世代には「民謡?・・う~ん、チョッとな~」な感じだった気がする・・。
まあ それでも全ての世代、国民的な感覚からすれば、昭和30~40年代にはまだまだ地元の歌、地元の踊りに対する 深い愛着と親和性が根付いていた。
そんな 国民的指向を反映するかのように企画され、昭和41年放送開始、以後8年間に渡って続けられた全国巡回型の番組が『ふるさとの歌まつり / NHK』であった。
現在でも放送が続く「NHKのど自慢」のように全国各地を巡り、その地その地での祭の再現、民謡や小唄、踊りの披露など現在ではまず見られないような番組構成であったが、高度経済成長期、地元を離れて暮らしていた人々の支持もあったのか驚異的ともいえる視聴率を獲得していた。
「ふるさと音頭」
作詞:宮田隆 作曲:古賀政男 編曲:伊藤祐春
ハアーアーアーアー
虹をかけましょ 南へ北へ 歌でつなごう 西 東
お国訛りは 違っていても ほんにふるさと よいところ
サアーサ 手拍子 シャッキリシャンと
呼べば応える ソレ ふるさとさん ふるさとさん
「超」が付くほど人気のあった ”宮田輝”氏 を司会として起用していたのも高視聴率に拍車を掛けていたのかもしれない。 先行番組でもあった上記の「のど自慢(当時、のど自慢素人演芸会)」の司会から、宮田氏が移動したために「のど自慢」の方の人気が急落したとの話もあるほどだ。
「NHK紅白歌合戦」の司会も長く務められた氏の人気は絶対的ともいえるほどで、昭和49年の参議院選挙に立候補してトップ当選、3期に渡って議員に在職した。
”地元” という小さな集団意識が薄まり、国や世界という大きな枠組みに意識が移ってゆく中で、地元への郷愁でもある “祭” や ”歌” への感覚も失われてゆく。 いつの日か、これらのものが完全に消え去ってしまうのか、それとも何かのきっかけで再び注目を集めるのかは分からないが、少なくとも かつてこういう風俗が存在したという記憶だけは失わないでいたいものだ・・。