歌声は風にのって

今回は多少 関西及びその周辺地域に限られた話題となる、ご了承願いたい。
とは言え、1000kmから離れた山形県でもその一片に触れているのだから、技術というものは大したものだと思う。

44程前となるから昭和50年代に入った頃か、NHK朝の連続ドラマで『風見鶏』という作品が放送されていた。

大正時代、主人公である松浦ぎん(新井春美)が、ドイツ人 ブルックマイヤー(蟇目良)と運命的な出会いを果たし、時代に翻弄されながらも神戸の地でベーカリーショップ(パン屋を)営むというものであったが、彼女が後の夫と出会う海岸が和歌山県太地の浜であったことから当地(私の居住地)でも話題となった。

 

© NHK 朝の連続ドラマ小説

 

夫・ブルックマイヤーのモデルとなった “ハインリヒ・フロインドリーブ” は実在の人物で、ドラマの脚本とは少々異なるが、日本人女性と結婚し神戸でベーカリーショップを開業、後の『フロインドリーブ』の創始となったそうである。

ドラマで描かれる北野の町は(放送ではほぼセットであるものの)異国情緒溢れる神戸の風を爽やかに伝えてくれた。

江戸末期以降、横浜とともに開港し多くの外国人とその文化を受け入れてきた神戸、通常とは異なる町並みの描写は、ドラマの本筋とは別に当時の人々を魅了した。 一躍、異国情緒のキーワードのもとに異人館ブームが到来、以来、神戸市はもとより兵庫県南部のチャームポイントともなり それは現在にも続いている。

当時、私も神戸の情景に憧れを募らせていたものの そこは学生の身分、おいそれと訪れることは叶わない。

そんな私にいつも神戸の風を届けてくれたのが『ラジオ関西』だった。 異彩に華やぐ神戸の話題も定番に、それにも増して伝わる “海の見える放送局” の風情、古くから続く音楽番組「歌声は風にのって」など、他の放送局とは似て異なる どこか独特の雰囲気を醸しながら須磨の息吹を感じさせてくれた。

“チューインガム”(松田りか・松田マミ姉妹によるフォークデュオ)による局のテーマソング『海の見える放送局』は、発表から既に50年に届く時を数えながら微塵も古さを感じさせず、今尚、局のジングルとして現役なのは驚きに値する。

 

 

もう一曲、ラジオ関西に関して未だに耳に残る歌がある。

「斉藤くにおのワイドワイド関西」という番組が放送されていた。
この番組内で月替り “今月の歌” という、オリジナルもしくはニューカマーな歌や歌手を一ヶ月に渡ってお送りするというコーナーがあったのだが、ある時、新規に作られた歌をどうした按配か、番組のアシスタントを務められていた浅尾寿美さんが歌うことになった。

浅尾寿美さんはラジオパーソナリティーであり、歌手が本業ではなかったので 公共電波に乗る歌唱に関しては、当然ながら戸惑いや恥じらい、苦労があったように見受けられた。 実際、放送された歌も上記のチューインガムのように流暢には運ばない。

ところが、これがリスナーに大受け! 番組を超えて支持されるスマッシュヒット曲となってしまった。初々しく懸命に歌う彼女の歌声と 少し物悲しい歌の内容が絶妙にマッチして、異人館の町の黄昏を見事に描き出す結果となったのだ。

『北野坂・風見鶏の街』 残念ながらこの音源は現在ネット上になく僅かに見つけられたのが、当時 ラジオ関西のジングルとして使われていた数秒間のものだけだ。 先日、レコード音源を手に入れたので、実家のレコードプレーヤーを修理出来ようものなら、いつの日にか機会を得て皆様のお耳にお届けしたい・・。

 

憧れに満ちた神戸を訪れたのは これらの放送を聴いていた十数年後、20歳代も終わりに近い頃である。 一人の女性を連れて神戸の街を堪能した。

その後、その女性とは十数回に渡って神戸を楽しんでいる。 今の家内である。

 

最後にラジオ関西のクロージング(その日の放送終了案内)の音源をご紹介して本日の記事の方もクロージングとしたい。 文頭で触れた山形県山形市で受信されたものだそうだ。

 

 

 

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