悪役がタイトル

「悪役がタイトル」 もう それだけで分かる人には分かるかもしれない・・。

「スペークトルマーン♪」もとい『宇宙猿人ゴリ』、昭和46年放映開始の特撮巨大ヒーローものである。

エアーズロックのように大きな岩山を削って描かれる『宇宙猿人ゴリ』のタイトルが堂々と登場する・・。 子供心にも思った「え? 何で?」「題名がゴリって・・」

それもそのはず、というか何というか、この番組(少なくとも当初は)ヒーローのスペクトルマンではなく、悪役である宇宙人科学者ゴリの方が主役だったそうな。

 

「ゴリ」、言うまでもなくゴリラからの流用であろう、それにしてもゴリラに対するイメージって、怒ると凶暴、鼻を広げてゴッホゴッホ言いながら胸をドラミングするイメージしかなかった・・。

彼方の惑星の出身で、粋なスタンドカラースーツに身を包んだ天才科学者というから、最初こちらが「ラー」で、よりゴリラ形態に近い部下の方が「ゴリ」かと思ったぞ・・。

それにしても、凶暴とは言えスマートさも悪知恵に長けたイメージも薄いゴリラをモチーフに用いたのは、やはり 先年ヒットした「猿の惑星」の影響を未だ引きずっていたのだろうか・・。

 

低予算かつ 製作決定から放映開始まで1ヶ月足らずという超ハードな状況の中で進められ、46年(1971年)の 何と正月2日(三が日の真っ只中)から始まった『宇宙猿人ゴリ』だが、当初はその慌ただしさの影響からか少々造りも荒かった・・。

ネット普及のおかげで現在見ることの出来る ”パイロット版 スペクトルマン” からは、かなり姿形も変えられ、曲線的だったスタイルから直線・多面体を強調した姿となった。一説に “ゴリ” もパイロット制作時点では ”ラー” の着ぐるみであったという。

金色+茶色 という(ツートーンカラーとしては成立しているものの)かなりマニアックなカラーリング、・・で、悪を振るうゴリに立ち向かってゆくスペクトルマン・・だが。。

変身をするにも 逐一 母星ネビュラの許可が必要であったり、援護してくれるはずの団体が本格的な武装組織でなく「公害Gメン」という、どこか畑ちがいの感が拭えないチームであったりと何かと異例ずくめの設定の元、前後回一話構成で進められた。

 

 

おそらく、当初から原作うしおそうじ の意向が色濃く反映されていたのであろう。この番組のメインテーマは「ヒーローvs怪獣バトル」ではなく、当時の世相に影を落としていた「公害」や「社会問題」であった。「公害Gメン」という団体もそれに基づく組織という構図。

登場する怪獣も、産業廃棄物による汚泥を元にした「ヘドロン」だの、口から公害ガスを吐く「公害人間」だの、ゴミ問題に連なる「ダストマン」だの、単なる怪獣というよりは、社会の愚かさと醜さを象徴する怨霊のごときものが多かった。

「ダストマン」(上の画像)など キャラクターデザインとしてどうなんだ? と思うほどアンバランスな出来であったが、ストーリーの陰惨な展開と相まって かなりグロテスクで恐怖を煽る存在となっていた・・。

事程左様に この番組は、総体にして暗いというかウェットな雰囲気が充溢していたのである。

 

ユニークな成り立ちで興され進んだ『宇宙猿人ゴリ』であったが、回が進むにつれて、やはりこの題名には疑問が出されたのか 20話を境に『宇宙猿人ゴリ 対 スペクトルマン』、40話以降~最終回まで『スペクトルマン』へと、より平板な形へ改題されてゆく。

そして、もうひとつ問題であったのが、そのメインモチーフ「公害問題」・・。

「公害」は確かに人類にとって脅威であり、排斥されるべき ”敵” であったが、同時にそれは人間そのものが生み出したものでもある。 そして その大半が ”生産品” と ”生産工程” に何かしら関係している。

つまるところ、スポンサーさんが困るのだ・・。

社会の発展に伴いあらゆる商品が開発・増産されてゆく中で、自然環境に対して何らの影響を及ぼさないと断言できる企業は極めて少数派であろう。
ヘタをすると いつか自分の足元をすくい兼ねないテーゼを、いつまでも謳われ続けるのは心落ち着かない。

第23・24話 登場の「交通事故怪獣 クルマニクラス」など、当時 深刻な社会問題であった “交通事故” の増加とその被害者をテーマにしたものだったが、(番組には付いていなかったが)これのスポンサーに自動車会社が付くはずもない。

題名の改変とともに番組内容も修正を課され、一般的な「ヒーローvs怪獣バトル」ものへと変わっていった。「公害Gメン」も名を変え「怪獣Gメン」となった。

 

当初の主人公?であった科学者 “ゴリ” はどうなったかというと、最終回において腹心ラーを失い、自ら身を投げ爆死するという、これまた ”悪の首領” らしからぬ最後を迎える。

そもそも、彼が地球征服を決した原因の一つには、この美しい星をその住民たる地球人そのものが汚し蹂躙し続けていることに憤慨したからだという。

公害問題はその後、様々な施策を経て是正されてきてはいるが、その全てが解決されたわけではない。 新世紀になって以前では考えられなかったような社会問題も表面化し続けている。

今の社会、地球の姿を見ても、やはり “ゴリ” は侵攻を開始するのだろう。
やはり 題名は『宇宙猿人ゴリ』で良かったのだ・・・。

映画「猿の惑星」のラストシーン

 

 

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