面倒は舞い降りた

昭和51年(1976年)9月6日、午後1時50分頃 北海道 函館空港に一機の未確認戦闘機が強行着陸した。 後に「ミグ25事件」と呼ばれる ソ連軍用機による亡命事件である。

MiG-25 を降り立たせたのはソ連の極東 “チュグエフカ基地” に所属していた ヴィクトル・ベレンコ中尉、気鋭のエースパイロットであった。当時のソ連の国情・軍内部の腐敗を嫌悪した彼は亡命を決意、訓練飛行中に墜落を装い隊を離脱した後、最も近距離である北海道の基地を目指したのである。

 

「MiG-25(ミグ25)」当時アメリカを含む西側諸国に実態を知られていないソ連(当時)の最新鋭戦闘機。1967年に機影情報を把握していたものの、性能はおろかその実在さえ疑問視されるほど、東側の厚いベールに包まれたまさに超の付くトップシークレットであった。

“Foxbat” のコードネームが付された機体は超音速戦闘機であることのみならず、マッハ3の実用巡航速度を叩き出し、それは現在に至っても破られていない。 あまりに高速飛行に振った設計であったために航続距離が短く、当の事件においてもそれが大きく作用したと言えよう。

 

さて、敵対勢力の超トップシークレットが自ら転がり込むという、西側諸国にとってはまさに ”棚ボタ” とも思えるハプニングであったわけだが、事件は様々な問題を露呈させることにもなった。

何よりも日本の防衛レーダーシステムに大きな穴があったということ。北海道西岸沖合で認知しスクランブル機を発進させたものの機影を捕捉するに至らず、超低空飛行による侵入を阻止出来なかった上、スクランブル機の機能も不十分であり、着陸されるまで実効的な対処が何らされなかった。

また、着陸後もその対処に自衛隊と地元警察の間(さらには法務省と防衛庁)で管轄の問題が浮き彫りになり、実際の対応まで時間が掛かり、その後も円滑に機能しなかった。

ベレンコ中尉のアメリカ亡命は順当に行われたものの、機体の取り扱いを巡って ”即時返還” を強硬に要求するソ連と 同盟国アメリカへの忖度の間で揺れ動き、中途に解体検査した挙げ句、返還を完了するまでに2ヶ月を要した。

 

事程左様にその対応状況は ”THE ニッポン” のように思えてならない・・。
そして それは今日に至っても改善されているかと言われれば『如何なものか』

防空システムに穴が有ったことが技術的な問題であったとしても、事実上、亡命でなく攻撃作戦であったならば甚大な被害を被っていたことは想像に難くない。

侵入・着陸後の対応策定にしても、その青写真さえ焼かれてなかったことは、”規定が無かった” だけの問題ではなかろう・・。

少なくとも当時、日本の領土において最も争乱に巻き込まれる可能性があった北海道地域においてさえ、この状況であったことは ある意味脅威ですらある。

 

比較するべきものではないのかもしれないが、今次のコロナ問題についても、その対処がもうひとつ充全に機能していない気がする。 未知の伝染病蔓延という数少ない経験下であることから、やむを得ないことも多いのだが・・。

ひとつには、現代的な思考・経済の状況から、目の前に有る問題・目の前の利益が見込める事柄以外に思考も予算も回っていなかったということ。

そして、もうひとつには、全ての人に対して程々の利益と損益を分かち合おうという、日本人独自の思考、これは外界を海で囲まれ閉鎖された国土で生きてきた日本独特の気風であり、同時に美徳でもあって私も否定するものではないが、全てに対しての八方美人な対応の模索は機動性を欠き、同時に緊迫感を阻害する要因ともなり得る。 結果、曖昧な施策となって 一部の人々に必要以上の労苦を掛けることにも繋がりやすい。

そこに お役所的 ”事なかれ主義” が噛み合った日には、状況によっては目も当てられない顛末にならないとも限らない・・。 (この お役所的 ”事なかれ主義” そのものも日本的気風から生まれたものだし、要するに日本人全体が基本的に危機感が薄く事なかれ主義なのだが・・)

畢竟、上記の反対、目先の利益や都合に拘らず将来的な観点で物事を捉え、その仮想対応だけでも早期から策定しておく、問題点の洗い出しや対応の基礎原案だけでも出しておくことが必要なのではないか・・。 一年も前から分かっていたはずの(いずれ来るであろう)ワクチン接種の施行プロセスに未だに手間取っている自治体が多いのは何故なのだろう・・?

気質の改変は難しく、また一概に変えれば良いというものでもないので尚更に難しいが、全ての人に納得して支持される施策など存在しないのも事実、批判の数を減らすことばかりに腐心している間、敵もウイルスも待ってはくれないのもまた事実なのだ・・。

 

 

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